イギリスの科学史家,生化学者。ロンドンの外科医の子として生まれ,ケンブリッジ大学で生化学を学び,1932年に同大学のリーダー(次席教授)となり,66年には同大学キース・カレッジのマスター(学寮長)となった。夫人ドロシーも生化学者としてケンブリッジ大学に奉職し,夫婦ともどもローヤル・ソサエティ会員となる。生化学に関する業績も多いが,1936年のころから中国科学史に深い関心をもつようになり,42年から4年間,中英科学顧問団の一員として中国に滞在した。帰国後,《中国の科学と文明Science and Civilisation in China》を編纂するという大プロジェクトを計画し,54年にその第1巻がケンブリッジ大学より出版された。このプロジェクトには全7巻が予定され,現在(1983)の時点で第2,3,4(3分冊),5(3分冊)巻が出版されている。このうち第4巻までは11冊に分けて邦訳出版された。こうした研究のかたわらユネスコの科学部長に就任したり,1952年にはアメリカが朝鮮で細菌戦術を行ったかどうかを調べる国際調査団の一員として朝鮮に赴いた。学者としての幅広い活動をしている。76年にケンブリッジ大学を引退してから,東アジア科学史図書館の設立を進めた。中国科学史研究のリーダーとして,その周辺には魯桂珍などの中国人学者をはじめ,欧米のすぐれた中国科学史家が集まっている。中国,日本をしばしば訪れ,その邦訳とともに日本にもなじみが深い。
執筆者:藪内 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
1900~95
イギリスの中国学者,生化学者,科学史家。ロンドンに生まれ,ケンブリッジ大学に進んで,医学を学ぶ。西洋の科学史をふまえ,比較史の立場から中国における科学技術の優位性を明らかにした。『中国の科学と文明』はその代表作。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…最も広く定義して,自然についてのなんらかの体系的知識を自然科学と呼ぶことにすれば,その種の知識体系は,どの時代,どの文化圏にも存在したはずであり,かつ今日でも存在しているはずである。事実,科学史の課題をそうした比較科学史的な関心に引き寄せて論じようとする論者もあり,たとえばJ.ニーダムの手で進行中の大著《中国の科学と文明》(1954‐)などは,必ずしも明確な比較的手法をとってはいないものの,基本的にはそうした関心のもとで書かれている。しかし,一般には科学は近代ヨーロッパの所産と考えられており,事実,今日〈(自然)科学〉の名に値するものは,いっさいの概念を西欧に負っているとみなされる。…
…そのほか,科学史の方面では,道士の練丹術のための化学実験がとくに注目され,彼らの発見したのが黒色火薬であったこと,そのプロセス,などが確認されたりしている。道教
[科学]
本稿の冒頭に中国的なものに対する誤解の例をあげておいたが,いまひとつ,これは誤解といってしまってよいかどうか一抹の疑いは残るが,有名なジョゼフ・ニーダムが紹介している話がある。J.B.ビュアリ《進歩の観念》(1920)には,古代ヨーロッパ人には全然知られていなかった火薬,印刷,羅針盤を発明したという理由で〈古代人〉に対して〈近代人〉をうまく擁護したルネサンス期のひとたちの議論を評価している個所があるが,これらの発明が実は中国人のものだという脚注すら見当たらない,と。…
…1500年以前においては中国の科学技術は,多くの点でヨーロッパより進歩していたとも考えられ,その成果のいくつかはイスラム諸国を通じてヨーロッパに伝わった。こうした観点は《中国の科学と文明》という大著を書いたJ.ニーダムによっても取り入れられ,ニーダムは1500年以前に重点をおいて中国で発達した科学技術の成果を記述した。
[中国の科学とヨーロッパ]
周知のように紙,印刷術,磁石,火薬は中国人によって最初に発明ないし発見されたものであり,これらの発明・発見がヨーロッパに及ぼした影響は甚大なものであった。…
…この立場による研究は,それ以前の形態学の方法のみによる発生学とは異なるものであることを自己主張するため,化学的発生学chemical embryology(あるいは生化学的発生学)と呼ばれた。この新しい学流の先駆者の一人はJ.ニーダムであるが,彼は後年大転向して中国の科学史の研究の権威者として有名になった。 20世紀後半の生化学や生物物理学の進歩はめざましく,発生の研究の技術としてどんどん駆使されるようになってきたので,発生の研究に生化学的方法など,形態学以外の方法を導入することは,現在の発生学の研究では当然のこととなってきたので,発生生化学というような呼称は消滅している。…
…またそのalchemyという語のal(アラビア語の定冠詞)からすると,錬金術はそれを表す語al‐kīmiyā’とともにアラビアに由来するとも考えられる。さらにJ.ニーダムのようにalchemyを中国語の〈金〉と結びつける論者もいる。しかし,この起源は遠くおもに古代エジプトと古代ギリシアに求めるのが穏当であろう。…
※「ニーダム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...
4/12 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
4/12 デジタル大辞泉を更新
4/12 デジタル大辞泉プラスを更新
3/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
2/13 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新