ネガティブ・エミッション(読み)ねがてぃぶえみっしょん(英語表記)Negative Emission

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ネガティブ・エミッション
ねがてぃぶえみっしょん
Negative Emission

大気中の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス濃度を減少させることができる技術のこと。ネガティブ・エミッション技術(Negative Emissions Technologies:NET(ネッツ))ともよばれる。温室効果ガス対策としては、化石燃料再生可能エネルギーなどで代替する、省エネルギーを推進する、CO2フリーの水素を利用する、などの手法があるが、これらはいずれも温室効果ガスの排出を抑制する、あるいは排出をゼロにするものであり、大気中の二酸化炭素濃度が上昇することを抑制することはできるものの、濃度を下げることはできない。ネガティブ・エミッション技術は、大気中の二酸化炭素をなんらかの方法で除去し、濃度を下げる抜本的な気候変動対策であるともいえる。

 ネガティブ・エミッション技術には、大気中のCO2を直接分離・回収して除去する直接大気回収(DAC:Direct Air Capture)と貯留(DACCS:Direct Air Carbon dioxide Capture and Storage)や、バイオエネルギーに二酸化炭素回収・貯留を組み合わせたCCSつきバイオエネルギー(BECCS:Bio Energy with Carbon Capture and Storage)などがある。BECCSについては、もともとバイオエネルギーは空気中に存在する二酸化炭素を吸収しているので、その燃焼によって二酸化炭素が排出されても地球全体としてはネット(差し引き)で排出は変わらないとされていることに加えて、その排出された二酸化炭素をCCSで除去するため、ネガティブ・エミッションになる、と考えられている。また、森林なども大気中の二酸化炭素を吸収するため、森林(の吸収)を拡大することもネガティブ・エミッションになる。

 世界の主要国が2050年のカーボンニュートラルを目ざすなか、CO2の排出をできるだけ削減することに取り組むことが重要であることは論をまたないが、それだけではカーボンニュートラルの実現はむずかしい。どうしても残ってしまう二酸化炭素排出分を、なんらかのネガティブ・エミッション技術を活用することで、初めてカーボンニュートラル達成が可能となるからである。

 これらの技術は基本的には現時点では商業化・実用化にはほど遠い革新的技術であり、今後の技術開発とコスト削減が不可欠となっている。

小山 堅 2022年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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