改訂新版 世界大百科事典 「ネズミカンガルー」の意味・わかりやすい解説
ネズミカンガルー
外観がネズミに似た,ウサギ大の原始的なカンガルー類。有袋目カンガルー科ネズミカンガルー亜科とニオイネズミカンガルー亜科に属する哺乳類の総称。オーストラリア,タスマニア,ニューギニアの砂漠,草原,森林にすみ,5属8種がある。カンガルー類としては,前肢が比較的大きく,長い尾はふつう有毛。ハナナガネズミカンガルーPotorous tridactylus(英名long-nosed potoroo)など一部の種では尾をものに巻きつけることができ,巣材の草などを巻きとって運ぶ。腹には大きな育児囊がある。最大種アカネズミカンガルーAepyprymnus rufescens(英名rufous rat-kangaroo)は,体長36~52cm,尾長35~40cm,最小種ニオイネズミカンガルーHypsiprymnodon moschatus(英名musky rat-kangaroo)は,体長25cm,尾長16cm前後である。
ふつう地下に数m四方の範囲に広がる複雑な巣穴をつくって集団あるいはつがいですみ,夜活動して,植物の葉,芽,根,果実などを食べる。年に1回ふつう1子を生み,数ヵ月間育児囊の中で育てる。農場のジャガイモを食害するなど,ごくふつうに見られる種もあるが,ニオイネズミカンガルーなどの一部の種では人が持ち込んだイヌやネコに駆逐されて,絶滅が心配されるほど数が減っている。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報