翻訳|norovirus
冬季に流行する感染性胃腸炎や食中毒の原因となる感染力の強い病原体。カリシウイルス科に分類される。1968年アメリカのオハイオ州ノーウォークで集団発生した急性胃腸炎患者から検出された小型球形ウイルスで、当初はノーウォークウイルスとよばれた。その後「ノロウイルス属」とよぶことが国際ウイルス学会で承認された。
ノロウイルスに汚染されたカキなどの生貝をはじめとする食品から経口感染するほか、感染した患者の糞便(ふんべん)や吐瀉(としゃ)物を介して二次的に感染する。感染は冬季に多く、腸内で増殖し数日の潜伏期をおいて発症し下痢が1~2日ほど続くほか、嘔吐(おうと)や腹痛、発熱を伴う。一般的には感染後の経過は良好だが、乳幼児施設や高齢者施設などで集団感染することが多く、脱水症状から重症となって死亡する例もある。ノロウイルス感染症は近年増加傾向にあり、2006年や2012年には世界的な流行をみた。ウイルスは変異をくり返し、ヒトからヒトへ感染するよう変異することもあり、新型のウイルスに対する抗体をもたないために大流行することが多い。ノロウイルスに対するワクチンは、一部有効性が認められるものもあるがまだ開発途上にある。予防のためには病原体に触れることを避け、手首までを含めた十分な手洗いと、ウイルスを吸い込まないためのマスク着用やうがいを励行する。消毒にはアルコール系は効果がなく、塩素系漂白剤などを希釈して用いる。
[編集部]
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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