ハンター(John Hunter)(読み)はんたー(英語表記)John Hunter

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ハンター(John Hunter)
はんたー
John Hunter
(1728―1793)

イギリス、スコットランドの外科医、解剖学者。グラスゴー近郊に生まれる。聖(セント)バーソロミュー病院などで外科医の修業をし、海軍を経て、25年間にわたりロンドンの聖ジョージ病院に外科医として勤務した。離断した腱(けん)の縫合術や動脈瘤結紮(りゅうけっさつ)術などで新しい術式を創案して外科手術の発展に貢献し、またハンター導帯(精巣導帯)の発見などの解剖学的業績をあげた。しかし彼の真髄は、それらの土台としての創意に満ちた実験的解剖学と、各種動物標本の収集に基づく比較解剖学とにあった。たとえば、若い実験動物を用いて、骨の2か所に鉛の玉を植え込んで骨の成長を調べたり、定期的にアカネの根を食べさせて、骨に生じる赤い縞(しま)模様から、複雑な形の骨の形成過程を調べたりした。また牛乳、着色したデンプン液などを動物の腸内に注入したあと、生体解剖によって血管とリンパ管への吸収のありようを調べたりした。以上のような創意工夫に富んだ研究によって、次々と新知見を加えていった。生涯を通じて収集し続けた各種動物の標本、先天奇形や実験結果の標本など膨大な数の収集品は、イギリス政府によってそのすべてが買い取られ、ハンター博物館が創設された。

[澤野啓一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

発見学習

発見という行為の習得を目指す学習。または,発見という行為を通じて学習内容を習得することを目指す学習。発見学習への着想は多くの教育理論に認められるが,一般には,ジェローム・S.ブルーナーが『教育の過程』...

発見学習の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android