改訂新版 世界大百科事典 「バザン」の意味・わかりやすい解説
バザン
Hervé Bazin
生没年:1911-96
フランスの作家。本名Jean-Pierre Hervé-Bazin。ルネ・バザンは大伯父。詩集《日》(1947)でアポリネール賞を受け,翌年,権威主義的な母親に対する息子の憎しみと徹底的な反抗を描いた自伝的小説《蝮(まむし)を手に》でセンセーションを巻き起こす。同系列の《壁にぶつけた頭》(1949),《小馬の死》(1950)のあと作風が変わり,《立ちて歩め》(1952),《愛せないのに》(1956),《息子の名において》(1960)などには,過酷な現実をしんぼう強く受容して生きる人物のけなげさや,できの悪い息子に深い愛情を注ぐ父親の諦念が描かれている。ただし辛辣(しんらつ)なイメージを多用するダイナミックな文体に変りはない。1973年以降アカデミー・ゴンクール会長をつとめた。
執筆者:渡辺 義愛
バザン
René Bazin
生没年:1853-1932
フランスの作家。アンジェのカトリック大学で法学を教えていたが,小説《ステファネット》(1884)で文壇に登場。20世紀初頭のカトリック復興の一翼を担い,同時代の無限の進歩の神話に逆らって,《滅びゆく土地》(1899),《芽吹く春》(1907)など,農村を舞台とする小説のなかで,家庭と大地への根付きを基盤とするキリスト教的伝統の尊崇を説く一方,貴重で確実な伝統の諸価値をなおざりにしているフランスの将来に対する不安を表明する。文体は詩情にあふれ,描写も正確だが,護教論的色彩が強く,カトリック的主題の深い追求はみられない。宗教的著作に《ド・フーコー神父伝》(1920)がある。アカデミー・フランセーズ会員。
執筆者:渡辺 義愛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報