フランスの医師バビンスキーJ. F. F. Babinski(1857―1932)が発見した、もっとも鋭敏な病的反射の一つであり、バビンスキー反射ともよばれている。大脳の皮質に発する運動の意志を迅速に全身の筋肉に伝える重要な機能を有する錐体(すいたい)路(皮質脊髄(せきずい)路)に障害があるときに認められるもので、臨床的に広く用いられている検査所見である。具体的には、足の底の外側を、打診に用いられる槌(つち)の柄でひっかいて刺激を与えるわけであるが、錐体路障害のときには、正常の場合とは異なり、足の親指が足の背中のほうに屈曲する現象がみられる。ときには、他の指が親指とは反対に、足の底側に屈曲して扇状に開くこともある。脳卒中、脳腫瘍(しゅよう)、脊髄炎、脊髄腫瘍などの場合にみられることで有名である。しかし、生後3、4か月までの乳児ではこの現象は生理的に認められるので、注意を要する。
[渡辺 裕]