かんきつ類スイートオレンジの1品種で世界的に栽培される。名はスペインの地名にちなむが原産地は異なる。常緑樹で高さ4~5mになる。樹姿は半球形。果実は球形~長球形で,重さは200~250g。日本産のものはやや小さい。果皮は橙黄色で剝皮は難しい。晩生で熟期は5月ごろ。種子数は数個で少なく,白色,多胚性。アゾレス諸島原産といわれるが詳細は明らかでない。中国,ポルトガル,アゾレス諸島,アメリカと,スイートオレンジが伝播(でんぱ)する過程のどこかで生じたと思われる。1870年代にカリフォルニアとフロリダにアゾレス諸島産の苗木が輸入され,大栽培の発端となった。カリフォルニアでスペイン人が自国のバレンシア地方のオレンジに似ているといったことから名称が生まれた。おもにアメリカ,地中海沿岸諸国,南アフリカで栽培される。日本には1903年アメリカより導入された。和歌山県などでわずかに栽培されるが,温度不足のため優良品の生産は難しい。オレンジの香りに富み,生食用,果汁用に好適。日本にはアメリカから冷凍濃縮果汁が輸入されている。樹上に残し,二次肥大後まで長期間収穫できるが,収穫が遅れると果梗部から緑色になり,品質が劣る。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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