パラアミノ安息香酸(読み)パラアミノアンソクコウサン(その他表記)para-aminobenzoic acid

デジタル大辞泉 「パラアミノ安息香酸」の意味・読み・例文・類語

パラアミノ‐あんそくこうさん〔‐アンソクカウサン〕【パラアミノ安息香酸】

para-aminobenzoic acidビタミンB複合体の一。葉酸の構成成分。ネズミでは欠乏すると白毛化が起こる。PABA

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精選版 日本国語大辞典 「パラアミノ安息香酸」の意味・読み・例文・類語

パラアミノ‐あんそくこうさん‥アンソクカウサン【パラアミノ安息香酸】

  1. 〘 名詞 〙 ( パラアミノは[英語] para-amino ) ビタミンB複合体の一つ。黄赤色の針状結晶。染料の中間体として用いられるほか誘導体が局部麻酔薬になる。抗白毛症因子。抗灰色毛因子。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パラアミノ安息香酸」の意味・わかりやすい解説

パラアミノ安息香酸
ぱらあみのあんそくこうさん
para-aminobenzoic acid

アミノ酸の一つで、4-アミノベンゼンカルボン酸、ビタミンH'ともいわれる。PABAと略記される。分子式C7H7NO2、分子量137.14、融点187℃。熱水、アルコール、エーテルに可溶。酵母から分離されており、葉酸の構成成分の一つとなっている。Streptococcusなどの細菌発育因子であり、ビタミンB複合体の一つとされたこともあるが、ヒトにとっては必須(ひっす)栄養素でないことが明らかとなり、現在ではビタミンに分類されていない。構造が類似しているスルファニルアミドスルファミン)は細菌の増殖拮抗(きっこう)的に阻害する。これは、PABAを発育因子として要求する生物においてパラアミノ安息香酸p(パラ)-アミノ安息香酸)から葉酸を合成する際に、スルファニルアミドがパラアミノ安息香酸に拮抗して阻害をおこすからである。したがって、スルファニルアミドはある種の細菌にとって必須な代謝反応を抑制するが、PABAから葉酸を合成できない宿主、たとえばヒトの代謝には影響を与えない。また、パラアミノ安息香酸のエステルの誘導体(プロカインなど)やアミド(リドカインなど)の誘導体は局所麻酔薬として知られる。

 1904年ヌープFranz Knoop(1875―1946)はω(オメガ)炭素原子にフェニル基を結合したいろいろな直鎖型の脂肪酸をイヌに食べさせた。フェニル酪酸を与えるとイヌの尿にフェニル酢酸の誘導体が含まれ、フェニルプロピオン酸を与えると安息香酸の誘導体が生成された。実際、炭素原子を偶数個含む脂肪酸をイヌに与えると、必ずフェニル酢酸がつくられ、炭素原子を奇数個含む脂肪酸を与えると必ず安息香酸ができた。これらの発見からヌープは、脂肪酸はω炭素の酸化によって分解されると推論した。この実験は、合成した標識(フェニル基)を用いて反応機構を解明した最初の実験という点で、生化学における金字塔の一つである。重水素や放射性アイソトープによる標識法が生化学の分野に登場したのは、これより数十年も後のことである。

[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パラアミノ安息香酸」の意味・わかりやすい解説

パラアミノ安息香酸
パラアミノあんそくこうさん
paraaminobenzoic acid

C7H7NO2 。略号 PABA 。ビタミンB複合体の一つ。ラットに対する抗白毛因子などとして知られている。水のほかにアルコールその他の多くの有機溶剤に溶けるが,石油エーテルには不溶。融点 187℃。軟膏,散布剤,外用表面麻酔薬,日焼け止めなどに使用。また葉酸やアゾ色素の原料にもなり,サルファ剤の拮抗剤としても用いられる。

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栄養・生化学辞典 「パラアミノ安息香酸」の解説

パラアミノ安息香酸

 →p-アミノ安息香酸

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