翻訳|parathion
1944年ドイツのバイエル社のシュラーダーG.Schraderらによって開発された有機リン酸エステル系殺虫剤で,以後,多数の同族体が開発された。無色,無臭の油状物質で,きわめて強力な殺虫作用を示し,とくにニカメイチュウ,シンクイムシ,ウンカ,ヨコバイ,カメムシ,アブラムシなど稲作害虫に対する効果が大きい。51年にバイエル社からホリドールFolidolという商品名で日本に輸入され,多量に使用されたが,人畜に対する急性毒性50%致死量LD50=6mg/kg(マウス,経口)と著しく高い欠点を有し,さらにその後の開発研究によって低毒性の有機リン酸エステル類が続々と開発されたため,日本では69年にその製造が中止され,71年に使用禁止となった。パラチオンによる殺虫作用は,神経の刺激伝達に関与するアセチルコリンエステラーゼという酵素の活性を阻害し,それによって神経系における正常な刺激伝達を攪乱することによって引き起こされることが証明されている。
パラチオンにおけるエチルエステル基を,メチルエステルに変化させたメチルパラチオンもシュラーダーによって開発された。その殺虫力はパラチオンとほぼ同様であるが,急性毒性はパラチオンより弱い。しかし,パラチオンにおけると同様な理由により,1969年に生産が中止された。
執筆者:高橋 信孝
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化学名O,O-diethyl-O-p-nitrophenylthiophosphateの国際的標準名。1944年にドイツで発明され、日本へはホリドールHolidolの商標名で輸入され、1952年(昭和27)からイネのニカメイガなどの防除に卓効があるので全国的に使われた。1958年から住友化学工業(現、住友化学)によって国産化され、多くの農薬会社が原薬を購入して製剤として発売した。農業の振興(食糧増産)に非常に役だったが、中毒者などの多発により、1971年から日本では使用が禁止された。
[村田道雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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