パルス放射線分解(読み)パルスホウシャセンブンカイ

化学辞典 第2版 「パルス放射線分解」の解説

パルス放射線分解
パルスホウシャセンブンカイ
pulse radiolysis

パルスラジオリシスともいう.試料に強力な電子線の単パルスを照射して,試料中に瞬間的に高濃度の遊離基励起分子,正・負イオン,電子などの短寿命中間体をつくり,これらに関する光吸収スペクトルあるいは発光スペクトル測定およびその時間的変化を追跡することによって,これら中間体の研究を行う方法をいう.パルス電子線源としては,線形加速器,バンデグラフ加速器などが用いられ,通常のものは,電子線エネルギー2~15 MeV,パルス電流100 mA,パルス幅1 μs 程度である.しかし,いずれも種々の値をもった特徴のある新しい型のものが開発されつつある.中間体の分光測定には,写真記録法と光電管およびオシロスコープによる光電記録法の2種類がある.分光測定のかわりに,生成したイオンによる電気伝導率を測定する場合もある.なお,電子線パルスのかわりにせん光を用いたせん光光分解法では,遊離基あるいは励起分子などの中性中間体のみが対象となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のパルス放射線分解の言及

【放射線化学反応】より

…この手法は剛性溶媒法と呼ばれ,放射線化学の分野で常用される研究手法の一つである。これと並んでよく使われる研究法にパルスラジオリシス(パルス放射線分解)法がある。これは加速器からきわめて短い時間に強力な荷電粒子(通常は電子線)を照射し,この間に生成する反応性の高い活性種の挙動を,光の吸収や発光などによって追跡する手法である。…

【放射線分解】より

…これは,LETの大きい場合,スパー内反応の寄与が相対的に増加するためと考えられ,このようなLETの違いによる反応性の相違をLET効果と呼ぶ。
[パルス放射線分解]
 放射線分解過程を研究する有力な手法に,パルス放射線分解(またはパルスラジオリシス)法がある。これは光化学の分野で開発されたせん光分解法(フラッシュフォトリシス)を放射線化学の分野に適用したもので,加速器からの強力な粒子(通常は電子)の短いパルスを照射し,試料中に生成する短寿命活性種の挙動を物理化学的手法によって追跡し,その同定を行うとともに反応性を調べるものである。…

※「パルス放射線分解」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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