知恵蔵2010の解説
パンデミックとは、感染症の全国的・世界的な大流行をいう。爆発感染などとも表現される。古くは、14世紀のヨーロッパにおけるペスト(黒死病)、19世紀以降7回にわたって発生したコレラの大流行などがある。また、昨今では「インフルエンザ・パンデミック」と同義語として使われることもある。インフルエンザ・パンデミックとは、新型インフルエンザウイルスがヒトの世界で広い範囲に急速に感染して広がり、世界的に大流行している状態である。第一次世界大戦中の1918年に発生し、猛威をふるったスペインかぜ(スペインインフルエンザ)、68年に発生した香港かぜ(香港インフルエンザ)なども、インフルエンザ・パンデミックである。スペインかぜでは、4000万~5000万人、一説によると1億人の死者を出した。新型インフルエンザウイルスは、動物、特に鳥類のインフルエンザウイルスが、遺伝子の変異などによってヒトの体内でも増殖できるようになり、ヒトからヒトへ効率よく感染できるようになったものである。ほとんどの人類が免疫を持たないため、感染すると爆発的に広がり、健康被害だけでなく、これに伴う社会的影響も甚大なものになる。世界保健機関(WHO)では、世界にパンデミックの脅威の深刻さや事前の対策計画の準備の必要性などを知らせるため、1~6のフェーズ(警戒段階)を設けている。フェーズ6が、パンデミックが発生した状態である。現在脅威とされている鳥インフルエンザ(H5N1型)のヒトでの発症は、2009年2月12日現在407人で、このうち254人が死亡している。ただし、発症者はインドネシア、ベトナム、中国などのアジアを中心とした地域に限定されており、警戒段階はフェーズ3とされている。日本ではまだ、ヒトでの発症は報告されていないが、発症した場合は17万~64万人の死者が出ると推計されている。そのため、政府は現在、WHOの事前対策計画に準じた行動計画を策定し、プレパンデミック(大流行前)ワクチンの開発を行うなど、パンデミックの発生に備えている。
(
小林千佳子フリーライター)
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2009」
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