ビダール苔癬
ビダールたいせん
Lichen simplex chronicus
(皮膚の病気)
体の一部に限って丘疹(ぶつぶつ)が現れ、かくなどの刺激によって丘疹が次第にくっつき合って盛り上がった紅斑になり、慢性に続く皮膚炎です。
衣服や毛髪など何らかの刺激によってかゆみが生じ、繰り返し同じ部位をかくことで皮膚炎の局面が次第に拡大・くっつき合っていくものと考えられています。
刺激に敏感な乾燥肌の人に起こりやすく、透析を受けている人や糖尿病の人にもみられることがあります。また、イライラした時などに無意識に皮膚の決まった場所をかく癖が原因になる場合もあります。
女性にやや多く、首の横からうなじに症状が現れるのが典型的ですが、前腕や下腿、まぶたや陰嚢などにもみられることがあります。症状はまずかゆみの強い丘疹で始まり、かくことなどの刺激によって次第にくっつき合って盛り上がった楕円形の厚い紅斑になり、表面は乾燥しています。
うなじや腕・脚などに現れるかゆみの強い盛り上がった紅斑が特徴的で、皮膚科を受診すれば、ほとんどは簡単に診断できます。尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、扁平苔癬などとの区別が必要な場合に、パッチテストや皮膚の生検を行うこともあります。
ステロイド外用薬を塗ります。かゆみが強い場合にはかゆみを和らげる抗ヒスタミン作用のある内服薬を服用します。ステロイドをしみ込ませたテープを貼るのも有効です。
かく癖や衣服との摩擦などかゆみのきっかけになるような刺激がないかどうかを考え、その刺激を避けることが第一です。衣服は柔らかい繊維のものにし、かゆみを悪化させる過度の飲酒をひかえましょう。かゆみがおさまっても、皮膚の盛り上がりやかさかさが残っている時点で治療を中断すると、症状が再燃することが多いので、病変が完全に軽くなるまで外用を続けることが大切です。
加藤 則人
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
Sponserd by 
ビダール苔癬
びだーるたいせん
湿疹(しっしん)性疾患の一つで、かつては慢性単純性苔癬、あるいは限局性神経皮膚炎とよばれた病変と同義である。初めて記載したパリの皮膚科医ビダールEmilie Vidal(1825―93)にちなんでビダール苔癬とよばれる。好発部位は項部(うなじ、首の後方)や側頸部(そくけいぶ)などで、まずかゆくなってかいているうちに、ぶつぶつ(丘疹(きゅうしん))が密集してきて皮丘と皮溝が著明となり、皮丘は乾燥して肥厚隆起し、皮溝は深く大きくなって苔癬化局面を形成する。この局面は比較的境界が明確であるが、ときに不明確な場合もあり、円形または不整形で、大きさは母指頭大から鶏卵大程度である。正常皮膚色のこともあるが、普通は淡紅色または灰白色で、表面にふけ状の鱗屑(りんせつ)がわずかについている。周囲には扁平(へんぺい)丘疹が散在することがある。病巣にはかきむしったために血液の乾いた血痂(けっか)をかぶっていることはあるが、湿潤するようなことはない。
治療としては、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤を含有した軟膏(なんこう)またはクリームを外用する。瘙痒が強い時にはかきむしらないようにするため、経口的に抗ヒスタミン剤を併用する。
[伊崎正勝・伊崎誠一]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
Sponserd by 
家庭医学館
「ビダール苔癬」の解説
びだーるたいせん【ビダール苔癬 Lichen Vidal】
[どんな病気か]
中年女性に多い皮膚病で、うなじに激しいかゆみが生じ、ひっかいているうちに皮膚が厚くなっていきます。境界がはっきりした乾燥性の皮疹(ひしん)です。陰部、腕、大腿部(だいたいぶ)(太もも)にもよくおこります。以前は、限局性神経皮膚炎(げんきょくせいしんけいひふえん)とも呼ばれていました。ビダールとは、この皮膚病を初めて報告したフランスの皮膚科医の名前です。
[治療]
副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬の外用で治りますが、薬の効果をあげるために、貼付(ちょうふ)したり、薬を含んだテープを貼(は)ったり、患部に注射したりします。
出典 小学館家庭医学館について 情報
Sponserd by 
ビダール苔癬
ビダールたいせん
lichen Vidal
境界鮮明な充実性丘疹の多発,融合,苔癬化がみられる疾患。通常かゆみは強いが,じくじくすることはまれ。中年女性がネックレスや着物の襟などの刺激によって首すじに生じることが多い。かつては限局性神経皮膚炎とみなされていたが,最近では特定部位に軽微な刺激が繰返し加えられたことによる慢性湿疹型接触性皮膚炎とみなす説が有力である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
Sponserd by 