ピッチ(その他表記)pitch

翻訳|pitch

デジタル大辞泉 「ピッチ」の意味・読み・例文・類語

ピッチ(pitch)

同じことを繰り返したり、一定の間隔で物事を行ったりするときの速度や回数。また、仕事や作業の能率。「酒のピッチが上がる」「工事を急ピッチで進める」
ボートで、1分間にオールをこぐ回数。
ランニングや水泳で、一定時間当たりの歩数あるいは水をかく回数。
プロペラなどの一回転で進む距離。
ねじ・歯車の、隣り合う二つのねじ山あるいは歯の間隔。また、コイルばねの線の間隔。
登山で岩壁などを登る際の、確保地点から確保地点までの間隔。「岩棚ごとにピッチを切る」
音の高さ。高低の度合い。「ピッチアクセント
野球で、投球のこと。ピッチング。「ワイルドピッチ
サッカーなどのグラウンド
10 プリンターの印刷、コンピューターのディスプレー表示における、文字と文字の間隔や行と行の間隔。
[類語](1速さ速度スピードペーステンポ速力/(9運動場競技場グラウンドコートコロシアムスタジアムトラックフィールド野球場サッカー場ゴルフ場スキー場ゲレンデ競馬場馬場パドックスケートリンクサーキットホームグラウンド

ピッチ(pitch)

コールタール石油もくタールなどを蒸留したあとに残る黒色の物質。ふつうコールタールピッチをさす。練炭・舗装材・防水材などに利用。
[類語]瀝青アスファルトコールタールタール

ピッチ

ピーエッチエス」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「ピッチ」の意味・読み・例文・類語

ピッチ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] pitch )
  2. 同じことを繰り返したり、また一定の間隔で事を行なったりする場合、その速度や回数。
    1. [初出の実例]「『まア、待て。相変らず調子(ピッチ)が早いな』半分飲みかけた盃を置いて」(出典:今年竹(1919‐27)〈里見弴〉三人上戸)
  3. 作業の能率。「ピッチがあがる」
  4. ボートで、オールを漕ぐ回数。
    1. [初出の実例]「あのピッチぢゃ一分間三十六本位だから」(出典:学生時代(1918)〈久米正雄〉競漕)
  5. プロペラ、スクリューなどが一回転した時に進む距離。
  6. 水泳で、腕、足を動かす回数。
  7. ねじが一回転した時に進む距離。ねじの山と山との間の長さ。
    1. [初出の実例]「ピッチの長いウォムギアに似た黒い浪のうねりの上に」(出典:ガトフ・フセグダア(1928)〈岩藤雪夫〉一)
  8. 歯車の歯と歯の間の長さ。
  9. 音の高低の度合。調子。〔欧米印象記(1910)〕
  10. コールタール、原油、木タールなどを蒸留した際に得られる黒色の固体炭素質の残留物。〔舶来語便覧(1912)〕
  11. 野球で、投手が打者に向かって球を投げること。「ワイルド‐ピッチ」
    1. [初出の実例]「投手(ピッチャー)が正投(ピッチ)を学びて」(出典:松蘿玉液(1896)〈正岡子規〉七月一九日)
  12. ピッチャー」の略。〔新式ベースボール術(1898)〕
  13. サッカーなどの競技場。
  14. 岩登りのときの確保地点から確保地点までの間隔。〔登山技術(1939)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピッチ」の意味・わかりやすい解説

ピッチ
ぴっち
pitch

石炭や木材などの有機物質を乾留して得られるタール、原油、石油留分を熱や触媒を用いて分解した際に得られる副生黒色重質油を蒸留した残留物。常温で固体、高温で溶融して液体となる黒色物質の総称である。ポリ塩化ビニル樹脂の高温下で塩酸の離脱、熱分解によっても得られる。成分は石油系と石炭系とで異なるが、いずれも芳香族縮合環を骨格とし、分子量分布が数百から数千にわたる化合物の混ざり合ったものから構成されている。軟化点の低いほうから高いほうに、軟ピッチ、中ピッチ、高ピッチとよばれる。ピッチのおもな用途は、ピッチコークス製造原料のほか、炭素電極、練炭などを製造するときの成形用粘結材、舗装材、防水材に向けられる。ピッチを改質し紡糸、焼成して炭素繊維がつくられている。

[真田雄三]

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改訂新版 世界大百科事典 「ピッチ」の意味・わかりやすい解説

ピッチ
pitch

石炭,木材などの乾留によって得られたタール,あるいは石油の熱分解によって得られた残油などを蒸留してつくられる,常温では固体の炭素質物質をいう。コールタールピッチは,電極,各種炭素成形物,練炭などの原料として使われる。電極は,アルミニウム製錬,製鋼用電気炉,電池などに用いられる。炭素成形物は,煉瓦,原子炉,電気ブラシ,機械用カーボンなどの用途がある。石油ピッチもまた,コールタールピッチとほぼ同様の用途にあてられるほか,成形炭コークスの原料として用いられる。成形炭コークスは非粘結性の石炭から製造される製鉄用の還元剤であり,ピッチは粘結剤として使われる。ピッチの主成分は縮合多環芳香族で,加熱により重縮合反応が起こって黒鉛型構造になり,いわゆる人造黒鉛として,電導性,熱伝導性,潤滑性などの優れた物性が与えられる。
執筆者:


ピッチ
pitch

音の高低の度合,あるいは水泳やボートで1分間に水をかく回数やオールをこぐ回数などを表すことばとして用いられているが,機械用語としては,次の2通りの意味,用法が重要である。一つは,ねじ山のように,同じ形をしたものが一定の間隔で連続しているときに,その間隔を示す寸法としてのピッチである。すなわち,ねじのピッチは,隣り合うねじ山の間隔寸法,歯車のピッチ(厳密には円ピッチ)は,同様に歯の間隔寸法である。1組の歯車がかみ合って正しく回転を伝えるには,このピッチが等しくなければならない。もう一つは,プロペラが,1回転の間に進む距離で,このピッチを可変にすると,可変ピッチプロペラのように,等速で回転しながらスピードを変えることができる。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピッチ」の意味・わかりやすい解説

ピッチ
pitch

声帯から発せられる声の高さをさす。振動数の大小に比例し,それが大きいほど高い。言語音としては,普通は有声音についていい,それに伴う声の基本音の高さをいう。したがって,無声音にはこの意味の高さがないことになるが,音韻論的にはそこに高さがあると解釈されることもある。東京方言話し手のなかにみられる/ ki˥sja / (貴社) や/ ki˥ta / (来た) の[k]など。文音調 (→イントネーション ) ,声調,高さアクセントは,この高さが一定の社会的習慣の型をなしているものをいう。なお高さは,このほかに,母音のフォルマントの高さをさすこともある。これは1人の個人においては各母音ごとにほぼ一定していて,発する声の高さには無関係である。

ピッチ
pitch

通常,同じ形状のものが等間隔に配列されているとき,その間隔の寸法をさす。 (1) ねじ ねじの軸線を含む断面において,互いに隣合うねじ山の相対応する2点を軸線に平行にはかったときの長さ。 (2) 歯車 ある規定された曲線に沿って,互いに隣合う歯面の相対応する2点をはかったときの長さ。通常,その曲線の名称をつけて呼ぶ。たとえば,ピッチ円 (またはピッチ線上) ではかった場合を円ピッチ,正面ではかったときを正面ピッチなどという。 (3) ばね コイルばねの中心線を含む断面において,互いに相隣る素線の中心を中心線に沿って測定したときの長さ。 (4) プロペラ プロペラが1回転する間に進む距離。しかし,一般に1回転する間に進む距離はプロペラに固有のものでなく,プロペラの運動状態を表わす値であるので,これを有効ピッチという。飛行機の場合その速度を V とし,プロペラの回転数を n とすると,有効ピッチは V/n で表わされる。プロペラの断面は翼形をなし,その弦巻線がボルトとナットのように空気を変形させることなくねじこまれていくとしたとき,1回転の間に進む距離を幾何ピッチという。

ピッチ
pitch

コールタール,石油脂肪酸,石炭,木材などの蒸留,乾留,熱分解で生じる粘着性炭質残留物。グランスピッチ (硬質アスファルト) のように天然に産するものもある。一般に常温で固体または半固体状の黒褐色の芳香族系化合物。密封剤や木材の防腐剤などに利用される。また,石油の分解残渣油である石油ピッチは燃料,コークス粘結剤,電気絶縁材料や合成炭素繊維などに利用される。

ピッチ
pitch

音楽用語。音の高さのこと。音波の振動数により決定される。振動数が多ければ高く,少なければ低い。音楽に用いられる楽音は種々の部分音から成る複合音であるが,このなかの第1部分音の振動数により音高が決定される。なお,管弦楽のような合奏には,音合せの基準となる高さを必要とするが,今日一般にとられるピッチは1点イ=440ないしはやや高めである。

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百科事典マイペディア 「ピッチ」の意味・わかりやすい解説

ピッチ

コールタール,石油原油,木タールなどを蒸留するとき,最後に釜残として残る黒色固体。軟化点は30〜100℃で,主成分は分子の大きい炭化水素の混合物。道路の舗装,粘結剤(練炭,電極用),防水剤,ピッチコークス原料などに使われる。原料の種類によりコールタールピッチ,石油ピッチ,木タールピッチなどという。
→関連項目原油練炭

ピッチ[湖]【ピッチ】

西インド諸島トリニダード・トバゴ,トリニダード島南西部のパリア湾に突出する半島に位置する湖。面積486km2,最深部75m。湖面はなめらかな黒いケーキ状に見えるが,周辺の石油地帯から浸潤した天然アスファルト。採掘して輸出される。

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化学辞典 第2版 「ピッチ」の解説

ピッチ
ピッチ
pitch

有機物の熱分解で得られるタールを蒸留した後に残留する炭素質物質.もっとも代表的なものはコールタールピッチで,電極用バインダーやさまざまな炭素材料の原料に用いられる.石油ピッチは,減圧残油を熱分解したときに生成する炭素質物質を意味し,燃料や炭素材料に利用される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「ピッチ」の解説

ピッチ

ワープロなどで、文字の間隔や行の間隔を表す語で、それぞれ文字ピッチ、行ピッチという。また、ディスプレイの光点の間隔や、ドットインパクトプリンターの印字ドットの間隔をドットピッチという。

出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

とっさの日本語便利帳 「ピッチ」の解説

ピッチ

試合を行うグラウンド。ゴールラインとタッチラインで囲まれた四角いエリアを指す。ピッチの周辺を含めてフィールドと呼ぶ。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

岩石学辞典 「ピッチ」の解説

ピッチ

石油の古い方言.現在もし使用されれば,ピッチまたはアスファルトの鉱物に関する語[Howell : 1934].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

音楽用語ダス 「ピッチ」の解説

ピッチ[pitch]

音の高さのこと。音の高さは音の持つ周波数によって決まる。

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世界大百科事典(旧版)内のピッチの言及

【ボート】より

…コースを侵害し,相手のストロークを妨害したと認められたときは失格となる。レースでは,各クルーがピッチに秘策を練る。ピッチは1分間にこぐストロークの回数で,キャッチ(オールをこぎ入れること)から6本目のキャッチまで正味5本分の時間を測定し,その秒数で300を割って算出する。…

【ねじ】より

… ねじは,1本のつる巻線に沿ってねじ山を作った1条ねじのほか,2本,3本,さらに一般に多数の平行なつる巻線に沿ってねじ山を作ったものがあり,2条ねじ,3条ねじ,あるいは2条ねじ,3条ねじを含めて多条ねじと総称される。ねじの軸線を含む断面において,互いに隣り合うねじ山の相対応する2点間の軸線に平行な距離をピッチpitchといい,1条ねじの場合はリードに等しいが,多条ねじではリードを条数で割ったものに等しい。 ねじ山のうち,おねじではもっとも外側,めねじではもっとも内側にある部分を山の頂といい,逆におねじではもっとも内側,めねじではもっとも外側にある部分を谷底という。…

【ピッチ】より

…石炭,木材などの乾留によって得られたタール,あるいは石油の熱分解によって得られた残油などを蒸留してつくられる,常温では固体の炭素質物質をいう。コールタールピッチは,電極,各種炭素成形物,練炭などの原料として使われる。電極は,アルミニウム製錬,製鋼用電気炉,電池などに用いられる。炭素成形物は,煉瓦,原子炉,電気ブラシ,機械用カーボンなどの用途がある。石油ピッチもまた,コールタールピッチとほぼ同様の用途にあてられるほか,成形炭コークスの原料として用いられる。…

【ねじ】より

… ねじは,1本のつる巻線に沿ってねじ山を作った1条ねじのほか,2本,3本,さらに一般に多数の平行なつる巻線に沿ってねじ山を作ったものがあり,2条ねじ,3条ねじ,あるいは2条ねじ,3条ねじを含めて多条ねじと総称される。ねじの軸線を含む断面において,互いに隣り合うねじ山の相対応する2点間の軸線に平行な距離をピッチpitchといい,1条ねじの場合はリードに等しいが,多条ねじではリードを条数で割ったものに等しい。 ねじ山のうち,おねじではもっとも外側,めねじではもっとも内側にある部分を山の頂といい,逆におねじではもっとも内側,めねじではもっとも外側にある部分を谷底という。…

【プロペラ】より

…また断面形状は飛行機の翼と同様な形状をしていて,できるだけ揚力が大きく抗力が小さいようにくふうされている。
[プロペラの形状と作動原理]
 プロペラが1回転したとき,ねじと同じように基準の面が進む距離Hをピッチと呼んでいる。図1では90度回転しているから基準面はH/4だけ進んでいる。…

【石炭】より

…石油化学が盛んになるまで,石炭からのガスやタールを出発点とする〈石炭化学〉は,化学工業の中の重要な部分を占めていた。また,タールを蒸留した残渣(ざんさ)であるピッチは,電極をはじめ種々の炭素材の原料になる。
[ガス化と液化]
 〈ガス化〉は,乾留では原料の石炭の60~70%がコークスとして残ってしまうのに対し,もっと多くのガスを得ようとする方法であり,固体の炭素分を残さないことが理想である。…

※「ピッチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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