ピュラモス(英語表記)Pyramos

改訂新版 世界大百科事典 「ピュラモス」の意味・わかりやすい解説

ピュラモス
Pyramos

バビロンの都を舞台にした悲恋物語の主人公。ローマ詩人オウィディウスの《転身物語》で名高い。親たちに結婚を許されなかったピュラモスと隣家の娘ティスベThisbēは,両家を隔てる壁の割れ目を通じて,ひそかに恋をささやきあって日を過ごしていたが,ついに二人は駆落を決意し,人が寝静まったころ,ニノス王の墓に近い桑の木の下で落ち合うことにした。ところがティスベが約束の場所に来たとき,不意にライオンが現れたため,彼女はベールを捨てて逃れ,ライオンは獲物をくらったばかりの口でそれを引き裂いて去った。そこへやって来て血まみれのベールを見たピュラモスは,てっきり恋人が野獣に食い殺されたものと思って,わが身に刃を突き立てると,やがて戻って来たティスベも,このありさまを目にして,ピュラモスの命を奪った刃でそのあとを追った。それ以来,桑の木は,恋人たちの死を悼むかのような暗赤色の実をつけるようになったという。この物語はチョーサーの《善女物語》にあるほか,シェークスピア喜劇《夏の夜の夢》の中で,機屋のボトムとその友人たちが演ずる劇中劇としても知られる。
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百科事典マイペディア 「ピュラモス」の意味・わかりやすい解説

ピュラモス

ティスベとともに古代ギリシア伝説の悲恋物語の主人公。相思両人が駆落すべく桑の木の下で落ち合うことにしたが,互い誤解もとでともに死に至る。チョーサーやシェークスピアにも採られて有名。

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