翻訳|phenacetin
19世紀末に行われたアセトアニリドの改良研究により発見された歴史の古い解熱・鎮痛薬であるが,副作用が比較的少ないので現在まで命脈を保って使われている。副作用の点からみると,この薬物が生体内で代謝されてできるアセトアミノフェンacetoaminophenのほうがさらに改良された薬物といえる。
これらの薬は解熱・鎮痛作用の強さやその作用の性格がアスピリンと似ているので一般的にはアスピリンのほうが多く使われているが,アセトアミノフェンは副作用の少ない点ではアスピリンよりも優れている。とくに消化管障害などの副作用のためにアスピリンを使えない患者には適している。しかし,これらの薬物はアスピリンと違って抗炎症作用がほとんどみられないので,関節リウマチには使われない。麻薬であるモルヒネのような強力な鎮痛作用はなく,また消化管から発生する痛みには無効である。
執筆者:鶴藤 丞
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p-ethoxyacetanilide.C10H13NO2(179.22).p-ニトロフェノールのNa塩をヨウ化エチルを用いてエチルエーテルとする.ついでニトロ基を還元しアミンとしてからアセチル化すると得られる.白色の結晶または結晶性の粉末.融点134~136 ℃.エタノール,クロロホルムに可溶,エーテル,水に難溶.下熱,鎮痛剤として用いられる.チアノーゼ,呼吸困難,頻脈,冷汗,体温降下などを伴う虚脱症状など,アセトアニリドと同様な副作用を起こす.LD50 1.65 g/kg(ラット,経口).[CAS 62-44-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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解熱鎮痛剤。白色の結晶または結晶性粉末。消化管からよく吸収され、代謝されてアセトアミノフェンとなり薬理効果を発揮するといわれている。副作用としてメトヘモグロビン形成によるチアノーゼ、呼吸困難、頻脈、体温下降などを伴う虚脱症状、腎(じん)障害が大量連用時におこりやすく、溶血性貧血もみられる。いわゆるかぜ薬によく配合されていた。
厚生労働省は、長期に大量に服用した場合の腎障害や腎盂(じんう)・膀胱腫瘍(ぼうこうしゅよう)の発生の増大などについて、医療関係者に注意を呼びかけており、フェナセチン含有の一般用医薬品については1982年(昭和57)以降認めていない。さらに、2000年(平成12)11月から2001年3月にかけて医療用医薬品の長期大量服用による重篤な腎障害の報告が相次いだため、フェナセチンの供給を停止するよう要請し、2001年4月19日をもって各企業では自主的に供給停止が行われた。
[幸保文治]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…副作用としては消化管障害が比較的重要である。
[アニリン系,ピラゾロン系]
アニリン系の化合物に属するフェナセチンやアセトアミノフェン,ピラゾロン系の化合物であるアンチピリンなども,作用形式からみて広い意味でのアスピリン様薬物の系列に入るものといえるが,解熱鎮痛作用に比べると抗炎症作用をもたないか,あるいは抗炎症作用が弱い点で異なっている。このような作用形式上の若干の違いの理由としては,組織,器官によってシクロオキシゲナーゼの阻害のされ方が違うためであろうと考えられるような実験結果も報告されている。…
※「フェナセチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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