ferroは〈鉄の〉,alloyは〈合金〉であるから本来は鉄合金というべきであるが,一般に合金鉄と呼ばれる。文字から判断すると,鉄を含む数種の金属の融合体ということになるが,実際にはそのおもな用途が,鋼の性質を変えてその用途を拡大するための,鋼への添加剤であるものをいう。用途が同じであれば,鉄を含まない金属や合金もフェロアロイの範囲に入れられる。したがって,われわれの身のまわりにある鋼やステンレス鋼などはフェロアロイとはいわない。フェロアロイの中でも代表的な,多量に生産されているフェロマンガンFe-Mn,フェロクロムFe-CrおよびフェロシリコンFe-Siの化学成分を銑鉄,鋼,ステンレスなどと比較して表1に示すが,鉄以外の成分が非常に多く含まれていることに特徴がある。
その用途は大きく二つに分けられる。第1は鋼の脱酸剤(脱酸素剤)である。一般に鋼は溶けた銑鉄に酸素を吹き込み,銑鉄中に含まれる炭素などの不純物を酸化物として取り除いてつくられる。しかし,その際,酸素が鉄の中にも溶け込み鉄は過酸化状態になる。このため鉄と過剰の酸素が化合して酸化鉄FeOが鋼中に生成したり,あるいは鋼を高温の溶けた状態から冷却して鋼塊にする際に,鋼中の酸素の溶解度が下がるために放出された酸素が一酸化炭素COの気泡として鋼塊中に残り,鋼の機械的な性質が著しく劣化する。フェロシリコン,フェロマンガンなどを過酸化状態の鋼中に添加すると,この鋼中の酸素はシリコン(ケイ素),マンガンと結合してSiO2,MnOなどになり,比重差によって溶けた鋼の表面に浮上するため取り除くことができる。用途の第2は,鋼への合金添加剤である。鋼に他金属を添加してその性質が改善されたものの中で,われわれに最も身近な例はステンレス鋼であるが,これは鋼にフェロクロム,フェロニッケルFe-Niなどを添加することによってつくられたもので,耐酸化性(耐錆性)や耐熱性が著しく優れている。
フェロアロイの代表的な製造法は電気炉法とテルミット法であるが,ほとんどが電気炉で生産されている。製法と製品の概要を表2に示す。還元すべき金属Mの酸化物をMOとすると,
がそれぞれの方法での反応式であるが,反応を容易に進行させるには1500~1600℃以上の超高温を必要とする場合が多い。反応に必要な熱エネルギーは電気炉法では電気抵抗熱により,テルミット法では反応熱自身によって与えられる。
執筆者:槌谷 暢男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
合金鉄ともいう.広義には鉄鋼製造に必要な合金類.フェロアロイは鋼の脱酸を目的とする脱酸用と,合金鋼あるいは鋳鉄の成分調整を目的とする添加用とに大別される.前者の代表例はフェロシリコンで50~100質量% SiのFe-Si合金,後者の例はフェロニッケルで,一般的な組成はNi+20質量% Co,2.7質量% C,5.0質量% Si,1.2質量% Crである.製造方法は,おもに各成分酸化物を含む鉱石から電気炉を用いた炭素還元によってつくる.そのほかにはテルミット反応を利用した方法,金属マンガンや金属クロムのように電解還元による方法などがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…屑鉄として重要なのは市場に出回る老廃屑で,その供給量は,その国の過去における資本財および耐久消費財としての鉄鋼の累積と,外国からの輸入屑鉄に左右される。
[フェロアロイ製造法]
フェロアロイ(合金鉄ともいう)は本来,製鋼過程で脱酸あるいは性質改善のために,鉄以外の成分元素添加の目的で用いられる各種の鉄合金をいうが,実際には鉄の含有量にとらわれず,上に述べた目的に用いられる金属,合金および化合物を総称してフェロアロイという。また鋳鉄,非鉄合金に特殊な性質を付与するためにも用いられる。…
※「フェロアロイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加