フクシン(読み)ふくしん(英語表記)fuchsine

精選版 日本国語大辞典 「フクシン」の意味・読み・例文・類語

フクシン

〘名〙 (fuchsine) 塩基性染料の一つ。分子式は C20H20ClN3 緑色金属光沢があり、温水に溶けて赤紫色エタノールにとけて赤色を呈する。亜硫酸無色になるが、微量アルデヒドで紫色になることからアルデヒドの検出に用いられる。木綿・麻・絹・羊毛・合成繊維類の染色ほか、分析試薬に用いる。マゼンタ唐紅(とうべに)

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デジタル大辞泉 「フクシン」の意味・読み・例文・類語

フクシン(fuchsine)

塩基性染料の一。緑色の金属光沢のある結晶。温水に溶けて紫赤色、エタノールに溶けて赤色を呈する。木綿・麻・絹・羊毛などの染色のほか、分析試薬としても用いられる。マゼンタ。ローザニリン唐紅とうべに

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクシン」の意味・わかりやすい解説

フクシン
ふくしん
fuchsine

赤色系塩基性染料の一つ。トリフェニルメタン系マゼンタ系列に属す。1856年イギリスのW・H・パーキンによるモーベインモーブ)の合成直後にポーランドのナタンソンJacob Natanson(1832―1884)によって発見された。アニリン38部、o(オルト)-トルイジン35部、p(パラ)-トルイジン27部を縮合剤を用いて反応させたあと、酸化して合成する。いくつかの成分の混合物である。類似の構造で、成分組成の異なるものに、マゼンタ、ローザニリンがある。

[飛田満彦]

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改訂新版 世界大百科事典 「フクシン」の意味・わかりやすい解説

フクシン
fuchsine



マゼンタmagentaともいう。古くから知られた代表的な塩基性染料で,ローズアニリン,パラローズアニリンの別称をもつが,実際にはこれらの混合物である。赤紫色の塩基性染料で,アニリン,o-トルイジン,p-トルイジンおよびそれらの塩酸塩の混合物をニトロベンゼン,鉄,塩化亜鉛の存在で加熱して合成する。現在は繊維染色よりも,顕微鏡用生体染色,苗鑑別などに用いられる。緑色の金属光沢をもつ結晶で,水,エチルアルコールに溶け赤紫色を呈する。
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化学辞典 第2版 「フクシン」の解説

フクシン
フクシン
fuchsine

C20H20ClN3(337.85).マゼンタ,ローザニリン,C.I.Basic Violet 14ともいう.トリフェニルメタン染料の一種.鉄粉と塩化亜鉛の存在下,アニリン,o-およびp-トルイジンの混合物をニトロベンゼン中で加熱すると得られる.緑色の結晶.分解点 > 200 ℃,λmax 543 nm(ε 93000).温水に可溶(紫赤色),アルコール類に可溶,エーテルに不溶.溶液は緑色の蛍光を発する.アルデヒドの検出試薬(シッフ試薬),繊維類(木綿,羊毛,絹,アクリル繊維),皮革,紙,生体などの染色に用いられる.[CAS 632-99-5]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フクシン」の意味・わかりやすい解説

フクシン
fuchsine

マゼンタ,ロザニリンとも呼ばれる。化学式 C20H19N3 。分解点 186℃。その塩酸塩 (化学式 C20H20ClN3 ) は緑色金属光沢のある暗赤色結晶で,分解点 200℃である。冷水に難溶,温水に可溶,エタノールに易溶。最も古い合成染料の一つで,1856年に J.ナタソンにより見出され,78年に初めてつくられた。赤色のトリフェニルメタン系塩基性染料であり,染料または染料原料として用いられる。また,この水溶液に二酸化硫黄を飽和させると無色の溶液が得られるが,これにアルデヒドを加えると紫色を呈するので,フクシン-亜硫酸試薬としてアルデヒドの検出に用いられる。

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百科事典マイペディア 「フクシン」の意味・わかりやすい解説

フクシン

マゼンタ,ローズアニリンとも。紫赤色の塩基性染料。モーブに次いで古い合成染料で,アニリン,o-トルイジン,p-トルイジンの塩酸塩の混合物を酸化して得られる。トリフェニルメタン染料の代表的なもので,結晶は光輝ある緑色。水,アルコールに可溶(赤色)。雑貨の染色,分析試薬(アルデヒドの検出)などに利用。(図)
→関連項目春慶塗

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