フランス移民暴動(読み)ふらんすいみんぼうどう

知恵蔵 「フランス移民暴動」の解説

フランス移民暴動

2005年10月末にパリ郊外で発生したフランスの移民第二・第三世代の暴動は全国に拡大して大惨事となった。幼稚園を含む公共施設が破壊され、同年11月中旬に暴動が終息するまでに放火された乗用車は9000台を超え、逮捕者も3000人近くに達した。その背景にはアラブ系というだけで就職も難しいという社会差別・格差の構造がある。フランスでは人口約6200万人のうち移民は約430万人で、そのうち300万人がマグレブ系(旧植民地北アフリカ出身)である。出生地主義をとるフランスでは、移民第二・第三世代はフランス国籍を有するが、彼らの多くが居住する大都市郊外の若年者失業率はフランス全体(約10%)の倍以上で、多くは単純労働に従事する貧困層に属する。フランスは歴史的に同化政策をとってきたが、高度経済成長に陰りが見えた1970年代ごろから入国管理を厳しくする政策に転じ、最近では移民の社会的統合政策を進めている。06年6月末にはサルコジ内相が提案した選択的移民政策を骨子とする新移民法が成立した。有用な技能資格や修士以上の学位保有者に対する滞在許可を与える一方で、家族呼び寄せやフランス人との結婚による滞在許可を従来より厳しくするほか不法入国者の合法化制度廃止を定めた。長期滞在者にはフランス語と市民教育の受講を求めている。

(渡邊啓貴 駐仏日本大使館公使 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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