プラスチック成形加工（読み）プラスチックせいけいかこう

改訂新版　世界大百科事典

プラスチック成形加工 (プラスチックせいけいかこう)

重合あるいは重縮合によって得られるプラスチックは，加工して価値のある成形品にしなければ，実用上の意味をもたない。成形以前のプラスチックは液状物，粉末，フレーク，チップ，乳濁液，分散液などの状態をとっており，それに合わせた成形加工法を適用しなければならない。またプラスチックには熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があり，前者は溶融→賦形→冷却という物理変化で成形され，後者は賦形→加熱→硬化という化学反応を利用して成形される。熱可塑性樹脂はこの成形が容易であり，生産性が高く大量生産に適している。プラスチックの加工法は金属やゴムの加工法から発展したものが多いが，現在ではプラスチックに適した加工法に改良されている。代表的な成形法，成形機について次に説明するが（図参照），フィルム成形法は〈プラスチックフィルム〉の項を参照されたい。

（1）圧縮成形compression molding　熱硬化性樹脂に応用される。粉末樹脂，その他添加剤を配合し，加熱金型に入れる。必要に応じガス抜きを行い，ついで加圧・加熱して成形品とし，冷却後取り出す。

（2）トランスファー成形transfer molding　熱硬化性樹脂に用いられる。成形材料を材料室に入れて加熱，流動性をもたせ，プランジャーで密閉金型中に押し出し金型内で硬化させ，冷却後取り出す。

（3）射出成形injection molding　おもに熱可塑性樹脂に適用される。生産性が高いので，熱硬化性樹脂にまで最近では適用範囲が広がっている。本来，金属のダイカストと似た方法で，成形材料を加熱，可塑化（流動化）させ，プランジャーで高圧をかけて冷却金型内へ材料を射出し，そこで冷却固化させ，金型を開き成形品を取り出す。可塑化のさせ方によって，プランジャー式，予備可塑化式，インラインスクリュー式などがある。一般に射出成形機の能力は最大射出量（オンス），可塑化能力（kg/h），射出圧力（プランジャーの先端最大圧力（kgf/cm²）），型締圧力（金型を締める最大圧力（t））で表される。良好な成形品を得るために，射出圧力，射出温度，金型温度が重要である。また金型の設計（樹脂の流れ方，成形収縮率，抜きテーパーの考慮）もたいせつである。成形時間は10～90秒であるが，ポリアセタールなど成形性のすぐれた樹脂は数秒で可能である。樹脂に核剤などを加え，成形サイクルを短くし，生産性をあげるようにする努力もされている。

（4）押出成形extrusion molding　熱可塑性樹脂に対し用いられる。材料を押出機中で加熱，可塑化し，ダイから押し出し，冷却して製品を得る方法であり，パイプ，フィルム，電線被覆，板材，シートなどを連続的に得ることができる。樹脂に切断したガラス繊維や充てん剤，難燃剤，核剤などを配合するためにも用いられる。その場合にはダイから押し出されたガット（フィラメント）をカッターで細断し，得られたチップ（ペレット）を再度射出成形機で成形する。

（5）吹込成形blow molding　押出成形または射出成形でパリソンといわれる管状体をつくり，この内部に圧縮空気を吹き込み，材料を膨張させ，金型に密着固化させる方法である。瓶の製造に適しており，ポリエチレン，ポリプロピレンのほか，最近ではポリエチレンテレフタレート（PET）の瓶もつくられている。

（6）注形法casting　熱硬化性樹脂に用いられる。液状樹脂に硬化剤を加え，所定の形に流し込み，加熱硬化させて取り出す方法である。

（7）積層法laminating　熱硬化性樹脂に用いられる。液状樹脂を紙布，ガラス繊維マットなどに含浸させ，これを積層し，所定の型に入れて加圧，加熱し硬化させて取り出す方法であり，フェノール樹脂の電気絶縁基板，プリントサーキット板，メラミン樹脂の化粧板などがこの方法でつくられている。また不飽和ポリエステルの成形もほとんどが積層成形で行われている。

（8）その他　シート類の二次加工法として，真空成形法，スタンピング加工法があり，シートに凹凸を与えることができる。成形と同時に発泡させる発泡成形，ライニング，塗装に用いられる粉末成形，スラッシュ成形，ペースト加工などがある。
執筆者：森川 正信

図1～図6

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」