プレアビヒア(その他表記)Preah Vihear

改訂新版 世界大百科事典 「プレアビヒア」の意味・わかりやすい解説

プレアビヒア
Preah Vihear

カンボジア北部,タイとの国境を走るダンレック山地中にあるアンコール時代の寺院遺跡。この地域は1904年フランス・シャム(タイ)協約によりフランス領カンボジアに帰属したが,第2次大戦中からタイが占拠し,その後両国国境紛争に発展した。寺院は,9世紀末にヤショーバルマン1世が創建し,11世紀前半にスールヤバルマン1世が増築・整備したもので,ビシュヌ神を主神とする。西を正面とし,なだらかな傾斜の自然の地形を利用して参道(全長848m,幅12m)がつくられている。この参道を上っていくと,塔堂,十字型祠堂と本殿があり,本殿のすぐうしろは断崖絶壁で,眼下にカンボジアの大平原が展望できる。標高657mのこの寺院を含む地域は,戦略上の要地でもある。1953年カンボジアは兵員を派遣したが,タイ軍に阻まれた。両国間で交渉が重ねられたが,58年外交関係の断絶にまで発展した。59年カンボジアはハーグの国際司法裁判所にこの寺院の領有問題を提訴し,62年国際司法裁判所はカンボジアの主張を認める裁定を下した。タイは領有権を保留するとしながらも,裁定に服し,カンボジア側がこの遺跡の主権を回復した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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