プロテインキナーゼ(その他表記)protein kinase

デジタル大辞泉 「プロテインキナーゼ」の意味・読み・例文・類語

プロテイン‐キナーゼ(protein kinase)

ATPリン酸基たんぱく質水酸基転位させる酵素総称チロシン残基に作用するもの(チロシンキナーゼ)とセリントレオニンの残基に作用するもの(セリン-トレオニンキナーゼ)がある。たんぱく質の特定の部分をリン酸化することによって、細胞内での情報伝達・代謝・細胞の増殖・形態変化などに重要な役割を果たしている。たんぱく質リン酸化酵素。たんぱく質キナーゼ。

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改訂新版 世界大百科事典 「プロテインキナーゼ」の意味・わかりやすい解説

プロテインキナーゼ
protein kinase

タンパク質キナーゼともいう。タンパク質リン酸化反応を触媒する一群の酵素。生体の代謝制御,細胞増殖制御にかかわる重要な酵素。おもにATPのリン酸基を,タンパク質(プロテイン)の特定アミノ酸,例えばセリン,トレオニン残基に付加する。リン酸化されたタンパク質の活性は特異的に変化する。環状AMPにより,活性が可逆的に変化するプロテインキナーゼはよく研究されている。この酵素は,制御サブユニットと触媒サブユニットから成立し,二つのサブユニットが結合していれば不活性だが,環状AMPが制御サブユニットに結合すると触媒サブユニットが解離して活性型になる。環状AMP依存性プロテインキナーゼによりリン酸化を受けるタンパク質には,多くの酵素,カゼイン,ヒストン,リボソームタンパク質やチューブリン,膜タンパク質などがある。酵素の場合,リン酸化により活性が調節される。グリコーゲンの分解,合成はホルモン(エピネフリングルカゴン)の作用によって環状AMPの濃度が増加し,ついでプロテインキナーゼが活性化され,ホスホリラーゼやグリコーゲンシンセターゼなどの酵素がリン酸化され,その結果分解や合成が促進される。近年発癌の機構とプロテインキナーゼの関係注目を浴びている。
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百科事典マイペディア 「プロテインキナーゼ」の意味・わかりやすい解説

プロテインキナーゼ

タンパク質リン酸化酵素,タンパク質キナーゼとも。タンパク質のセリン,トレオニンまたはチロシンのヒドロキシル基にATPのリン酸基を転移し,タンパク質をリン酸化する反応を触媒する酵素。細胞中の多くの酵素やさまざまな機能を担うタンパク質は,リン酸化によって活性化あるいは調節されるものが多く,プロテインキナーゼは生物学的に重要な役割を果たしている。細胞内の第2次メッセンジャーである。環状AMPによって活性化されるプロテインキナーゼA,カルシウムによってイノシトール脂質の代謝回転を介して活性化されるプロテインキナーゼC,カルモジュリン依存性プロテインキナーゼなどがある。

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化学辞典 第2版 「プロテインキナーゼ」の解説

プロテインキナーゼ
プロテインキナーゼ
protein kinase

略称PK.タンパク質リン酸化酵素ともいう.タンパク質にリン酸基を導入する酵素.ATPの末端のリン酸基をタンパク質中のセリン,トレオニン,チロシン残基などのOH基に転移させてリン酸化する.セカンドメッセンジャー(二次メッセンジャー)であるサイクリックAMPや,Ca2+ によって活性化されるPKAやPKCは,セリン-トレオニンキナーゼであり,受容体型プロテインキナーゼ(インスリン受容体や成長因子容体など)はチロシンキナーゼである.[CAS 372092-80-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「プロテインキナーゼ」の解説

プロテインキナーゼ

 [EC2.7.1.37].タンパク質キナーゼともいう.ATPのγ位のリン酸をタンパク質の特定のセリン,トレオニン,チロシンのヒドロキシル基に転移してリン酸エステルとする反応を触媒する酵素の総称.ホルモンその他の信号が細胞に伝えられたとき,その信号に対応する細胞内での信号伝達に重要な役割をはたしている.

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