改訂新版 世界大百科事典 「プージャー」の意味・わかりやすい解説
プージャー
pūjā
ヒンドゥー教における神像礼拝の儀礼。供物を神像に直接ささげ礼拝する儀礼を中核とする。バラモン教の伝統にのっとったヤジュニャyajña,すなわち祭火に供物をささげ神々に犠牲をおくる儀礼を中心にした祭式と対照をなす。日々家庭で水,食物,花などを神像にささげる簡単なものから,寺院や祭りの場で詳細な儀軌にもとづいて祭官が執行するものまで,形式は多様である。基本は賓客のもてなしと同様の方法で神像を供養することで,蜜を混ぜた飲物マドゥパルカを賓客に供する,ベーダ時代の賓客歓待の儀礼に従うのを最善とする(〈プージャー〉の語は,このマドゥパルカを〈混ぜて供する〉を意味するサンスクリット〈プリチpṛc〉を語源としている)。
典型的プージャーはおよそ次のような儀礼で構成される。(1)歓迎 神像に来臨を願い,米や水をそそぎ,花などをささげる。(2)座具 着座を願い,座具をささげる。(3)洗足 足を洗うための水をささげる。(4)表敬 敬愛をあらわす特殊な供物(栴檀(せんだん),花などを入れた水)をささげる。(5)口をすすぐ儀礼 食前・食後の作法で口をすすぐ水を供える。(6)沐浴 神像を洗う。(7)衣服 衣,装身具,聖紐などをまとわせる。(8)栴檀香 栴檀の粉で宗派のしるしをつける。(9)花 散華による供養。(10)焼香 線香などをたく。(11)灯明 小さな土器の灯明をささげる。(12)供物 調理した食物,果物などをささげる。(13)敬礼 平伏して崇拝する。(14)右遶(うによう) 右回りに神像の周囲を回り,敬意をあらわす。(15)辞去 じっとしていとまごいをする。
執筆者:高橋 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報