ヘキサシアノ鉄酸カリウム(読み)ヘキサシアノテツサンカリウム

化学辞典 第2版 の解説

ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム
ヘキサシアノテツサンカリウム
potassium hexacyanoferrate(Ⅲ)

K3[Fe(CN)6].赤血塩フェリシアン化カリウムともいう.鉄イオンのまわりにシアン化物イオンが正八面体型に配位している.単斜晶系の結晶赤色のため,赤血塩とよばれる.ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウムを濃塩酸,過マンガン酸カリウムで酸化してつくる.水に易溶.溶液は黄色.日光により光分解する.白線青写真の原料.ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウムより不安定で有毒.アルカリ性溶液は酸化作用を示す.インジゴ染色の酸化剤にも用いられる.この水溶液に Fe2+ を加えると,ターンブルブルー(紺青)の沈殿を生じる.この沈殿は,ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム溶液に Fe3+ を加えたときに生じるプルッシアンブルーと同様に,格子点に Fe3+,Fe2+ が配列し,その間をシアン化物イオンがつなぐ巨大分子を形成する.Fe3+ では沈殿を生じず,緑または青色の溶液となる.また,銅イオンでは黄緑亜鉛イオンで橙,銀イオンで赤褐色の沈殿を生じるので定性分析に用いられる.[CAS 13746-66-2]


ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム
ヘキサシアノテツサンカリウム
potassium hexacyanoferrate(Ⅱ)

K4Fe(CN)6(368.35).フェロシアン化カリウム(potassium ferrocyanideまたはpotassium ferrocyanate),黄血塩(黄血カリ)(yellow prussiate of potash)ともいう.Fe塩水溶液にシアン化カリウムを加えるか,シアン化ナトリウムでNa塩をつくってから,複分解でK塩とする.正八面体型の [Fe(CN)6]4- を含むイオン結晶.Fe-C約1.89 Å.普通は,三水和物で単斜晶系の結晶.密度1.88 g cm-3.反磁性.三水和物は,熱すると約100 ℃ で無水物となる.空気中で安定である.錯形成が強いのでCNによる毒性はない.日光で徐々に分解する.エタノールに不溶,水に易溶.水溶液は保存すると徐々に分解する.水溶液をハロゲン,H2O2などの酸化剤で酸化すると,K3[Fe(CN)6](赤血塩)を生じる.顔料(プルッシアンブルー)の製造原料,医薬品,写真用,赤血塩製造の原料,鋼の焼入れなどに用いられる.[CAS 13943-58-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム
ヘキサシアノてつにさんカリウム
potassium hexacyanoferrate(II)

化学式 K4[Fe(CN)6] 。フェロシアン化カリウム,黄血カリ,黄血塩ともいう。 1710年に初めてつくられた。古くは動物の血液,羽毛,角などを鉄屑と混ぜて炭酸カリウムと融解し,融成物を水で抽出してつくったが,現在では石炭ガス精製の際,青酸洗浄装置などに捕集されるシアン化水素から合成される。ふつう水和物で黄色の結晶。 100℃で水を失い,白色吸湿性の無水物を生じる。さらに熱すると窒素を放出して分解する。水に易溶。毒性はない。水溶液に Fe3+ 塩を加えると濃青色のベルリン青の沈殿が生じる。鉄,銅,銀,亜鉛など重金属の定性分析用試薬,シアン酸,シアン化カリウム製造の原料に用いられる。

ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム
ヘキサシアノてつさんさんカリウム
potassium hexacyanoferrate(III)

化学式 K3[Fe(CN)6] 。フェリシアン化カリウム,赤血塩ともいう。ルビー赤色の結晶。比重 1.89。水に可溶,酸によって分解する。水溶液を放置しても徐々に分解する。光を避けて保存することが必要である。青写真紙の感光剤,写真用に主として使用。木材着色剤,エッチング液,メッキ,酸化剤などとしても使われる。分析試薬としても重要である。

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世界大百科事典(旧版)内のヘキサシアノ鉄酸カリウムの言及

【シアノ鉄錯塩】より

…俗称フェロシアン酸。ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液に濃塩酸を加え,冷却してエーテルを加えるとエーテル付加物が得られ,これを乾燥水素気流中で80~90℃に加熱すると得られる。無色の結晶性粉末。…

【シアノ鉄錯塩】より

…俗称フェロシアン酸。ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液に濃塩酸を加え,冷却してエーテルを加えるとエーテル付加物が得られ,これを乾燥水素気流中で80~90℃に加熱すると得られる。無色の結晶性粉末。…

※「ヘキサシアノ鉄酸カリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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