日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ヘラー(Joseph Heller)
へらー
Joseph Heller
(1923―1999)
アメリカの小説家。ニューヨーク市ブルックリン生まれのユダヤ系。雑誌社勤務を経て作家生活に入る。かたわら大学でも教えた。爆撃手として第二次世界大戦を体験し、8年を費やして書いた『キャッチ‐22』(1961)は1960年代の「ブラック・ユーモア」の代表的作品。故意に時間を混乱させ、漫画的人物とグロテスクな場面で軍隊と戦争の不条理性を描き、現代社会の狂気を映すものと評価された。寡作で、ほかに小心翼々の中間管理職を主人公とする小説『何かが起こった』(1974)、出世主義者の中年ユダヤ人大学教授を描く小説『輝けゴールド』(1979)がある。いずれも鋭い風刺のなかに憐憫(れんびん)と内省がうかがえる。また映画台本と戯曲が数作ある。
[北山克彦]
『飛田茂雄訳『キャッチ=22』上下(ハヤカワ文庫)』▽『篠原慎訳『なにかが起こった』上下(1983・角川書店)』▽『飛田茂雄訳『輝けゴールド』(1981・早川書房)』