最も簡単な芳香族スルホン酸。融点50~51℃の無色の結晶であるが,潮解性が強く,通常は融点44℃の2水和物として取り扱われる。酸解離指数pKa(25℃)=0.70。水,エチルアルコールに溶けるが,ベンゼンには溶けにくい。ベンゼンを発煙硫酸によってスルホン化すると得られる。クロロスルホン酸Cl-SO3Hを用いてスルホン化を行うこともできる。ナトリウム塩を水酸化ナトリウムNaOHとともに融解すると-SO3Naが-ONaで置換され,さらにこれを酸化するとフェノールC6H5-OHが生成する。同様に,シアン化ナトリウムNaCNで融解するとベンゾニトリルC6H5-CNが,ナトリウムアミドNaNH2ではアニリンC6H5-NH2がそれぞれ得られる。五塩化リンPCl5を作用させると塩化ベンゼンスルホニルC6H5-SO2-Clを生成する。
執筆者:小林 啓二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
芳香族スルホン酸を代表する化合物。無色の結晶。ベンゼンに発煙硫酸を作用させて得られる。二水和物の融点は43~44℃。潮解性があり、保存しにくいため、普通は塩の形で保存する。水、エタノール(エチルアルコール)にはよく溶ける。ナトリウム塩を水酸化ナトリウムとともに融解し、酸で処理するとフェノールが得られる(フェノールの工業的製法の一つ)。五塩化リンの作用で塩化ベンゼンスルホニルC6H5SO2Clを、塩酸と加圧下で加熱するとベンゼンを生じる。
[務台 潔]
C6H6O3S(158.19).C6H5SO3H.ベンゼンを硫酸でスルホン化すると得られる.二水和物は葉状結晶.融点43~44 ℃.無水和物は融点65~66 ℃.pKa -2.7.潮解性がある.水,エタノールに可溶,ベンゼンに微溶,エーテル,二硫化炭素に不溶.アルカリ融解によりフェノールを生じる.エステル,酸無水物,酸ハロゲン化物が有機合成に使われている.[CAS 98-11-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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