改訂新版 世界大百科事典 の解説
ペントースリン(燐)酸回路 (ペントースりんさんかいろ)
pentose phosphate cycle
ワールブルク=ディケンズ経路,ホスホグルコン酸経路,ヘキソースリン酸回路とも呼ばれる。グルコースを出発点とする代謝経路の一つで,次の二つの反応系に大別される。(1)グルコース-6-リン酸の酸化的脱炭酸によるペントースリン酸の不可逆的生成。この反応でNADP⁺の還元型NADPHも生成する。(2)各種トリオース,テトロース,ペントース,ヘキソース,ヘプトースのリン酸エステルが相互に変換する可逆的過程。これらの反応は解糖と糖新生の経路に加わって,再びグルコース-6-リン酸に戻る。
この回路の生理的役割としては,(1)NADPHの再生により,脂肪酸生合成などに必須な補酵素を供給する,(2)各種の糖や核酸の生合成の素材となるリボース-5-リン酸を供給する,(3)無酸素条件下でも本回路が6回転すると1分子のグルコース-6-リン酸から6分子のCO2と12分子のNADPHを生成し,グルコースの炭素原子を完全燃焼する,などがある。この回路の酸素はすべて細胞質に存在する。(図)
執筆者:徳重 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報