ホトケノザ(英語表記)henbit
Lamium amplexicaule L.

改訂新版 世界大百科事典 「ホトケノザ」の意味・わかりやすい解説

ホトケノザ
henbit
Lamium amplexicaule L.

畑や道端に普通にみられるシソ科の越年雑草。茎は基部で分枝し,数本立ち上がって,高さ10~30cm,葉は対生し,茎の下部にあるものは葉柄があるが,上部のものは葉柄がなく,腎心形で長さ1~2.5cm,相対して車座に茎をとりかこむようにつき,数個の花をその腋(えき)につける。花は4~6月ころに開き,約2cm弱の紅紫色で細長い筒をもった唇形花をつける。しかし,つぼみのままで開かないで自家受粉をして果実をつける閉鎖花をつけることも多い。和名は〈仏の座〉の意味で,車座に相対してつく葉の状態を仏座に見立てたもの。一名サンガイグサ(三階草)とも呼ばれる。春の七草にいうホトケノザはこれではなく,タビラコをさすといわれる。ユーラシア大陸から北アフリカにかけて北半球に広く分布し,北アメリカにも帰化している。止痛胃潰瘍(いかいよう)に対する民間薬として利用されることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホトケノザ」の意味・わかりやすい解説

ホトケノザ
ほとけのざ / 仏の座
[学] Lamium amplexicaule L.

シソ科(APG分類:シソ科)の越年草。茎は下部で分枝して立ち上がり、高さ10~30センチメートル。葉は対生し、茎の下部のものは葉柄があるが、上部ではなく、半円形で縁(へり)に浅い鋸歯(きょし)状の切れ込みがあり、相対して茎を車座に抱く。名は、この葉の状態を仏座に例えたもの。また、葉が数段になるのでサンガイグサ(三階草)の名もある。春、葉腋(ようえき)に筒状唇形で長さ1.7~2センチメートルの紅紫色花をつけるが、多くは閉鎖花となって、つぼみの状態のままで開かないで結実するものが多い。畑や道端に生え、ユーラシア大陸、アフリカ北部に広く分布し、北アメリカに帰化する。なお、春の七草のうちのホトケノザは本種ではなく、キク科コオニタビラコだといわれる。ところが、京都冷泉(れいぜい)家に残る、春の七草を書いた掛軸にあるのはオオバコであり、異説もある。

村田 源 2021年9月17日]


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百科事典マイペディア 「ホトケノザ」の意味・わかりやすい解説

ホトケノザ

シソ科の一〜二年草。本州〜沖縄,ユーラシア大陸に広く分布し,路傍畑地にはえる。茎は高さ10〜30cm,葉は対生し円形で,下部の葉は柄が長いが,上部の葉は無柄で互いに茎を抱く。4〜5月,上部の葉腋に,紫紅色の唇形(しんけい)花を開く。花冠は長さ1.7〜2cmで,長い筒部がある。なお,春の七草のホトケノザはタビラコのこと。

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世界大百科事典(旧版)内のホトケノザの言及

【キュウリグサ】より

…若い茎葉は食用として山菜料理に用いられる。春の七草のホトケノザは本種であると考えられたことがあるが,正しくはキク科のコオニタビラコである。全草を中国や日本で民間薬として利用することがある。…

【タビラコ】より

…本州~九州,朝鮮,中国に分布する。コオニタビラコとも呼び,春の七草のホトケノザは本種であるという人もいる。羽状に分裂した葉が,田の面にロゼットをなして生育するようすから〈田平子〉とよばれる。…

※「ホトケノザ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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