ホメオボックス

百科事典マイペディア 「ホメオボックス」の意味・わかりやすい解説

ホメオボックス

体節的構造の形成にかかわる一群遺伝子共通する塩基配列。最初,ショウジョウバエ形態形成に関わる遺伝子群(ホメオティック遺伝子)が共有するDNA塩基配列として見出されたもので,約60アミノ酸を指定している。昆虫類以外にも,ヒトを含む脊椎動物,ウニ,ホヤなど広範な動物の発生関連遺伝子,さらには酵母や植物の遺伝子からも見つかっている。昆虫類では,体節構造が決まったのちの各体節が何になるかという発生運命を決める際に,ホメオボックスをもつ遺伝子群が働いている。脊椎動物でも,かなり似た働きをする例が多い。ホメオボックスは,遺伝子産物が核内でDNAと結合するためのアミノ酸配列を決めており,遺伝子発現調節に関わって広範な生物の発生分化に重要な役割をもち,進化的によく保存されてきた領域と考えられる。
→関連項目体節

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知恵蔵 「ホメオボックス」の解説

ホメオボックス

各種の生物の体節構造を決定する遺伝子群に共通する塩基配列。昆虫の触角が脚に、後翅(こうし)の退化で生じる平均棍(へいきんこん)が後翅になるような現象ホメオーシス、そのような突然変異を生じる遺伝子をホメオティック遺伝子と呼ぶが、これらの遺伝子や体節構造を決定する遺伝子には、約180塩基対の共通部分があることが1980年代に明らかになった。この部分がホメオボックスで、他の遺伝子の転写を制御する働きをもつ。昆虫だけでなく、多くの動植物にも認められることから、生物に普遍的に存在する形態形成遺伝子として注目されている。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

化学辞典 第2版 「ホメオボックス」の解説

ホメオボックス
ホメオボックス
homeobox

ショウジョウバエの体節形成にかかわる遺伝子(homeotic gene)に共通に見いだされる,180塩基からなる配列.ヒトにも存在し,形態形成に関与することが明らかになっている.ホメオティック遺伝子は転写調節因子をコードしているが,その一部であるホメオボックスはDNA結合領域をコードしている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホメオボックス」の意味・わかりやすい解説

ホメオボックス
homeo box

ショウジョウバエの形態形成に関与し,体節形成を支配する遺伝子群に共通な 180塩基対の配列。この遺伝子が発現して得られる蛋白質は,DNAに結合し,他の遺伝子の発現を制御していると考えられる。ホメオボックスの塩基配列は,昆虫だけでなく,両生類,鳥類,哺乳 (ほにゅう) 類等においてもその存在が確かめられている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「ホメオボックス」の解説

ホメオボックス

 約180塩基のDNAの配列で,タンパク質をコードしており,そのタンパク質はホメオボックス応答配列をもつ遺伝子の発現を調節する.翻訳制御の活性ももつ.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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