ボーキサイト(読み)ぼーきさいと(英語表記)bauxite

翻訳|bauxite

精選版 日本国語大辞典 「ボーキサイト」の意味・読み・例文・類語

ボーキサイト

〘名〙 (bauxite) アルミニウム水酸化物主成分とする岩石。赤褐色ないし灰黒色。酸化鉄二酸化珪素を含む。金属アルミニウムや、アルミニウム化合物の製造原料として重要。原産地フランスのアルル地方のレ‐ボーにちなむ名称。鉄礬土(てつばんど)
※魔都(1937‐38)〈久生十蘭〉一〇「年五万瓩(キロ)の優良ボーキサイト(アルミニュームの原鉱)の採掘権を」

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デジタル大辞泉 「ボーキサイト」の意味・読み・例文・類語

ボーキサイト(bauxite)

アルミニウムの鉱石。水酸化アルミニウムが主成分で、酸化鉄二酸化珪素けいそも含む。名は、南フランスの産地ボー(Baux)地方の石の意。鉄礬土てつばんど

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボーキサイト」の意味・わかりやすい解説

ボーキサイト
ぼーきさいと
bauxite

アルミニウムの主要鉱石の一つ。おもに水酸化アルミニウムの鉱物(ギブス石ベーム石など)からなり、現在あるいは過去の、熱帯地方における激しい風化作用(いわゆるラテライト化laterization)の結果、アルミニウムに多少とも富む岩石、すなわち泥質堆積(たいせき)岩、閃(せん)長岩、玄武岩などから生成される。水酸化アルミニウムの鉱物は球顆(きゅうか)(スフェルライトspherulite、針状物質の放射状集合体)をつくりやすく、これに少量の不純物である赤鉄鉱針鉄鉱が混入して、特徴的な球顆状構造をもつ岩石がつくられる。これがボーキサイトであり、一般に柔らかく、比重2.5以下、酸で分解しやすい。アルミニウムの精錬では、氷晶石と蛍石(ほたるいし)を加え、電気炉で熱して比較的低温で融解させ、電気分解を行う。日本ではほとんど産しないが、香川県屋島において、安山岩溶岩台地の上にごく小規模な不純分に富む水酸化アルミニウム鉱物を主成分とする土壌様のものがみられた。英名は原産地フランスのボーBauxにちなむ。

[加藤 昭]


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改訂新版 世界大百科事典 「ボーキサイト」の意味・わかりやすい解説

ボーキサイト
bauxite

アルミニウムとアルミナの主要な原料鉱石。名前は最初の産地フランスのアルル地方のレ・ボーLes Bauxにちなむ。化学組成は一般的にAl2O340~60%,Fe2O31~25%,SiO21~10%,TiO21~10%,H2O12~30%である。Alは主として水酸化アルミニウム鉱物(ギブサイトAl2O3・3H2O,ベーマイトAl2O3・H2O),Feは大部分針鉄鉱,SiO2の多くはカオリンなどの粘土鉱物として存在する。モース硬度1~3,比重2.5前後。ボーキサイトは,熱帯の風化作用で岩石中のアルカリ・アルカリ土類元素の溶脱やケイ酸塩鉱物の分解が行われて,鉄とアルミニウムの水酸化物が残留してできると考えられている。ボーキサイトは最近新しい鉱床が多く発見されて埋蔵量は相当増えた。1965年の世界の埋蔵量は約58億tと推定されていたが,93年には約232億tと推定された。生産量は96年に世界11400万t,うちオーストラリア4300万t,ギニア1400万t,ジャマイカ1200万tである。日本にはボーキサイトは産出しない。
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岩石学辞典 「ボーキサイト」の解説

ボーキサイト

1821年にベルティエがフランスのアヴィニョン(Avignon)の(Les Baux)のhydoferroaluminousな粘土を分析して発表した[Bertier : 1821].これがデュフレノイによってbeauxiteとされ[Dufrenoy : 1847],後にデヴィルによってbauxiteと再命名された[Deville : 1861].ボーキサイトはかつて(Al2O3・2H2O)組成の鉱物と定義されたが,ギブサイト(Al2O3・3H2O),ベーマイト(Al2O3・H2O)と,これらの同質二像のダイアスポアなど数種類のアルミニウム水和物の集合であることがわかった.ボーキサイトの堆積物は重要なアルミナの資源鉱床で,理想的なものでは40~50%のAl2O3と20%のFe2O3を含み,SiO2は3~5%しか含まれていない.ボーキサイトは,一般に起伏の少ない安定した台地地域で地下水によって溶脱することで毛布状の堆積物として,火成岩,変成岩,石灰質岩などの地域で形成される.中には他の地域で形成されたものが再堆積したものもあり,大陸棚堆積物を伴うことがある.ボーキサイトはすべての地質時代に形成される.一般的にはギブサイトは第三紀および現在のボーキサイト堆積物に産出し,ベーマイトは中生代の堆積物に,ダイアスポアは古生代および古いボーキサイト堆積物に産出する特徴がある[Valeton : 1972].

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百科事典マイペディア 「ボーキサイト」の意味・わかりやすい解説

ボーキサイト

アルミニウムの重要な原料鉱石。熱帯地方のラテライト中にしばしば産出する含水アルミナ。塊状,粘土状,魚卵状として存在し,一般に鉄を含むために赤色を帯びる。主要な構成鉱物はギブサイトAl(OH)3,針鉄鉱,カオリンなど。硬度1〜3,比重約2.5。普通Al2O3 50〜60%,Fe2O3 1〜25%,SiO2 1〜10%程度。現在熱帯のラテライト中だけでなくかつて熱帯性気候下にあった古い地層中からも産する。地中海沿岸,ジャマイカ,ギニア,ブラジル,オーストラリアなどが主要産地。
→関連項目バイヤー法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボーキサイト」の意味・わかりやすい解説

ボーキサイト
bauxite

水酸化アルミニウム鉱物の集合したもので,おもなものは,ギブス石ベーム石ダイアスポア,非晶質含水アルミナなど。普通,褐鉄鉱,石英,長石類のほか,ハロイサイト,カオリナイト,ノントロン石などの粘土鉱物と共生する。アルミニウムに富む岩石が風化作用を受け,アルミニウム以外の諸成分の大半が溶脱されて生じる。熱帯地域に特徴的にみられ,大鉱床はいわゆるラテライト (熱帯地方の風化土壌) 中にみられる。ボーキサイトの鉱床は風化残留鉱床に属し,火成岩が風化作用を受けて生成したもの (インドの鉱床) ,不純な石灰岩やドロマイトが風化作用を受けて生成したもの (アメリカのジョージア州,アラバマ州の鉱床) などがある。

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化学辞典 第2版 「ボーキサイト」の解説

ボーキサイト
ボーキサイト
bauxite

Al2O3・2H2Oに近い化学組成の鉱物.色は白,帯黄,褐色などさまざまであり,産状も結核状,塊状,土状などいろいろである.通常,酸化物のほか,ケイ酸,マグネシウムなども少量含む.必ずしも1種類の含水アルミニウム鉱物ばかりでなく,ジプサイトAl2O3・3H2O,ベーマイトAl2O3・H2Oを主成分とするものがある.金属アルミニウム,耐火物,アルミナセメントなどの原料として重要である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のボーキサイトの言及

【アルミニウム】より

… アルミニウムは,アルミノケイ酸塩鉱物などとして広く地球上に存在し,地殻中の存在度は酸素,ケイ素に次いで第3位であるが,金属元素としては第1位である。おもな鉱物としては,長石,雲母,ボーキサイト,氷晶石,カオリナイトなどがあるが,とくにボーキサイトはアルミニウム生産の最重要鉱物である。宝石としてのサファイアおよびルビーの本体は,ともにアルミニウムの酸化物Al2O3で,コランダムと呼ばれる鉱物の一つである。…

【残留鉱床】より

…岩石や鉱床が地表で風化・浸食作用をうけ,水に溶けやすい成分や分解しやすい鉱物が運び去られることにより,溶けにくい成分や分解しにくい鉱物が濃集してつくる鉱床。水に溶けにくい成分が濃集してつくる鉱床としては,アルミニウムの資源としてもっとも重要なボーキサイト鉱床,ニッケルのケイニッケル鉱鉱床,マンガン鉱床などがある。ボーキサイトは高温多湿の熱帯地方で風化により岩石を構成する鉱物が分解し,水に溶けやすいアルカリやアルカリ土類元素などが溶出して,難溶性のAl2O3(50~60重量%),Fe2O3(1~25%),TiO2(1~15%)などが土壌に残留したもので,現在地表で生成しつつあるものから過去の地質時代のものまで知られている。…

※「ボーキサイト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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