日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポーツマス(イギリス)」の意味・わかりやすい解説
ポーツマス(イギリス)
ぽーつます
Portsmouth
イギリス、イングランド南海岸のほぼ中央にあるユニタリー・オーソリティー(一層制地方自治体)で、イギリス最大の軍港都市。人口18万6704(2001)。ロンドンの南西約100キロメートルにあり、イギリス海峡に面する天然の良港に恵まれている。後背地であるハンプシャー盆地の農業地帯との交通の便もよく、農産物の取引も盛ん。鉄道の電化後は海岸保養地としても発展した。現在の町はポーツマス、ポートシー、ランドポート、サウスシーの4集落が発展して形成されたが、各地区はいまも軍港・ドック、行政中心、労働者居住地、観光・保養などの諸機能を分担している。第二次世界大戦後、新たに軽工業なども加わって戦災から復興した。市内には12世紀に建てられた教会をはじめ美しい建物が多く残る。作家C・ディケンズの生地。
[井内 昇]
歴史
11世紀にノルマン人が来寇(らいこう)したころにはすでに小さな町であったが、中世には貿易港としても国防上からもとりたてて注目すべき港ではなかった。しかし、この地が重要な海軍基地となりうる絶好の条件を備えていることを見抜いたヘンリー8世が、1540年造船所を設けて以来、イギリス第一の軍港として発達した。1628年にはかつてのジェームズ1世の寵臣(ちょうしん)バッキンガム公が、フランス遠征のため当市にきて暗殺された。軍港として数多くの海軍の栄光と結び付いており、その典型として、トラファルガーの海戦のネルソンの旗艦ビクトリー号が保存され、公開されている。第二次世界大戦中はドイツ軍の空襲によって甚大な被害を被ったが、1944年の連合軍のヨーロッパ大陸への反攻上陸作戦当時は、当市近郊に総司令官アイゼンハワーの司令部が設置され、彼はそこからノルマンディー上陸作戦を指揮した。最近では、1982年のフォークランド紛争の際、当市から艦隊や輸送船が出航した。
[松村 赳]