消費者は,商品を購入するとき,できるだけ自己の欲求を満足させるように商品を選択する。このような消費者の求めに応じて,適切な商品を市場に提供する企業活動がマーチャンダイジングである。1961年のアメリカ・マーケティング協会の定義によれば,〈マーチャンダイジングとは,企業のマーケティング目標を実現するのに最も有効な場所,時期,価格,および数量で,特定の商品またはサービスを市場に送り出すことに伴う計画と管理である〉としている。これからすると,マーチャンダイジングは製造業,流通業の両方にまたがる広い概念であるが,一般には,卸売業や小売業で,品ぞろえや商品仕入れのための計画や管理の意味で使われている。これに対して,製造業ではもっぱら製品計画という言葉が用いられている。マーチャンダイジングは,流通業者が生産と消費の間に立って,消費者の求め(需要)に応じて商品を取りそろえて販売する(供給)ことにより,市場における需給の出会いと調節(マッチング)機能を果たしている。今日のように,外国製の製品を含めて供給される商品の種類が多くなり,消費者のニーズも多様化してくると,流通業者がつねに消費者の求める商品を取りそろえておくことは困難となってきている。また,欲求の多様化が商品の個性化を促進し,一時のように大量生産された商品を大量販売につなげることもむずかしい。このため,消費者にこたえようとすれば多くの在庫を余儀なくされ,経営効率を考えて品ぞろえの幅を縮小すれば顧客を失うことになる。このジレンマを解消し,消費者の欲求を満たしながら流通在庫を少なくするためには,商品ごとに需要の動向を敏感にキャッチする情報システムと,その変化を供給に迅速に反映させる垂直的に統合された流通システムを構築する必要がある。小売店の店頭に設置されたPOS(point of sales)システムからのデータは,最適なマーチャンダイジングのための有力な指標となっている。
執筆者:川嶋 行彦
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マーケティング活動の一部をいい、商品化計画と訳すこともある。これは、市場調査のような科学的手法をもとにして、市場の需要に適合した製品またはサービスを適正な時期と場所で、また適正な価格で流通させるための体系的施策をいう。その具体的内容は、製造業者の場合と流通業者の場合とでは大きく相違する。製造業者の場合には、この内容はプロダクト・プランニングないし製品計画に相当する。そのため、マーチャンダイジングという用語はほとんど使用されない。プロダクト・プランニングとは、顧客の希求する需要内容を正確かつ敏速にとらえ、顧客満足(CS)を実現するような製品の量、質、価格、供給時期、供給方法を計画することをいい、その計画の基本内容は、新製品開発計画と既存製品廃棄計画とから構成される。これに対し、流通業者の場合には、自ら製品を生産しないから、狭義には商品選定と仕入計画からなる品ぞろえになり、広義にとれば価格決定(値入れ、マークアップ、すなわち仕入原価にどれだけマージンを加えるか)、陳列・展示、販売促進などが加わる。いずれにせよ、製造業者と流通業者の相違は、製品開発をするか否かにある。しかしこのことは、流通業者が受動的マーチャンダイジングしかできないことを意味するものではない。製造業者への市場情報の供与や流通業者ブランド製品の存在がそれを証明している。
[森本三男]
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(懸田豊 青山学院大学教授 / 2007年)
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