メチルアルコール(英語表記)methyl alcohol

翻訳|methyl alcohol

精選版 日本国語大辞典 「メチルアルコール」の意味・読み・例文・類語

メチル‐アルコール

〘名〙 (Methylalkohol)⸨メチールアルコール・メチュールアルコール⸩ 一酸化炭素水素から合成されるアルコール。化学式は CH3OH 刺激臭のある無色の揮発性、可燃性の液体。毒性がある。木材の乾留でも得られるため木精ともいう。燃料、合成原料、エチルアルコールの変性、溶剤、その他きわめて広い用途がある。メタノールメチル
風俗画報‐二二七号(1901)災異門「消毒用ホルマリン洋灯にメチュール、アルコールを注入して、火を点じて箱中に置き」

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デジタル大辞泉 「メチルアルコール」の意味・読み・例文・類語

メチルアルコール(〈ドイツ〉Methylalkohol)

最も簡単な構造のアルコール。刺激臭のある無色の揮発性の液体。水に溶ける。木材を乾留すると得られ、工業的には一酸化炭素水素とから合成する。有毒で、少量の飲用でも失明・致死のおそれがある。燃料、ホルマリンの原料など工業上の用途が広い。分子式CH4O 示性式CH3OH 木精。メタノール。

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改訂新版 世界大百科事典 「メチルアルコール」の意味・わかりやすい解説

メチルアルコール
methyl alcohol

化学式CH3OH。メタノール,木精,カルビノールなどともいう。1661年R.ボイルは木材の乾留から中性の液体を得たが,1834年J.B.A.デュマによって,この物質はCH3OHと決定された。最も構造の簡単なアルコールである。

一酸化炭素を水素で還元する高圧接触反応により製造する。

 CO+2H2─→CH3OH

ふつう工業的には,250~350気圧,300~400℃で行われ,触媒としては酸化亜鉛ZnOと酸化クロム(Ⅲ)Cr2O3との混合物が用いられる。原料ガスは,天然ガス,水性ガス,メタンの分解などにより得られる(C1化学)。

融点-97.78℃,沸点64.65℃,密度d145=0.79109,屈折率n15D=1.3312。水,エチルアルコール,エーテルなど多くの有機溶剤に溶ける。

アルコールとしての一般的性質をもつ。

(1)金属との反応によるアルコラートの生成。たとえば,

(2)エステル化反応

(3)エーテル化反応

(4)一酸化炭素との反応

 メチルアルコールを飲用すると急性中毒メチルアルコール中毒)を起こし,酩酊,腹痛,視力障害などの症状が出,多量の場合は昏睡におちいり,死亡する。致死量は30~100gとされるが,7~8gでも重篤な症状を起こすことがある。メチルアルコールは体内で代謝されて,ホルムアルデヒドからギ酸を経て二酸化炭素に分解されるが,これらの毒作用はホルムアルデヒドとギ酸によるとされる。治療は他の急性中毒と同様,胃洗浄や下剤の投与,輸液を行うが,メチルアルコールの代謝を抑える目的でエチルアルコールを与えることもある。

用途はきわめて広い。ホルムアルデヒド(ホルマリン),塩化メチル,ギ酸,酢酸などの合成原料として用いられる。そのままでは,自動車耐寒燃料,溶剤,エチルアルコールの変性剤として多量に用いられる。
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百科事典マイペディア 「メチルアルコール」の意味・わかりやすい解説

メチルアルコール

化学式はCH3OH。メタノール,木精とも。特有臭のある無色可燃性液体。融点−97.78℃,沸点64.65℃。水,エチルアルコール(エタノール)と自由に混ざる。有毒で8〜20gで失明,30〜100gで致死。溶剤,燃料,ホルムアルデヒドの製造,エステル原料,エチルアルコールの変性剤など広い用途をもつ。木材乾留の際生成する木酢液中に含まれ,工業的には一酸化炭素と水素から高圧接触反応により合成される。
→関連項目ガス化学工業カルビノール殺菌剤石炭化学石油化学木材乾留

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メチルアルコール」の意味・わかりやすい解説

メチルアルコール
methyl alcohol

メタノール,木精ともいう。化学式 CH3OH 。エチルアルコールに似た匂いを有する。有毒で,8~20gで失明,30~50gで死にいたる。無色揮発性,可燃性液体。沸点 64℃。一酸化炭素と水素から高圧接触法によって工業生産される。アルコール同族体で最も簡単な分子である。酸化するとホルムアルデヒドとなり,さらに強く酸化するとギ酸を経て,二酸化炭素と水にまで分解する。有機合成 (メチル化反応) の原料。分析用試薬,溶媒,燃料として用いられ,エチルアルコールの変性剤としても用いられる。

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化学辞典 第2版 「メチルアルコール」の解説

メチルアルコール
メチルアルコール
methyl alcohol

[同義異語]メタノール

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メチルアルコール」の意味・わかりやすい解説

メチルアルコール
めちるあるこーる

メタノール

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栄養・生化学辞典 「メチルアルコール」の解説

メチルアルコール

 →メタノール

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世界大百科事典(旧版)内のメチルアルコールの言及

【アルコール】より

…芳香族化合物の側鎖の飽和炭素原子に水酸基のついた化合物もアルコールで,芳香族アルコールとよんでいる。 個々のアルコールの慣用名は,一価アルコールでは水酸基と結合しているアルキル残基の名称の後に,アルコールを付記して,たとえばメチル基の場合をメチルアルコール,エチル基ではエチルアルコールのように命名する。IUPAC命名法では,水酸基に対して〈オールol〉という語尾を用い,たとえばメタンCH4に対応するCH3OHをメタノール,エタンC2H6に対応するアルコールはエタノールと命名する。…

【カルビノール】より

メチルアルコールの別称。A.W.H.コルベはメチルアルコールにカルビノールの名称を与え,他の一価アルコールをその置換体として命名した。…

【C₁化学】より

…これらのプロセスのいくつかについて補足しよう。(1)メタノール(メチルアルコール)が合成ガスから安価に生産されるようになれば,海外からこれを輸入し,合成化学原料として利用することができよう。その筆頭候補は酢酸合成である。…

※「メチルアルコール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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