メディアアート(読み)めでぃああーと(英語表記)media art

デジタル大辞泉 「メディアアート」の意味・読み・例文・類語

メディア‐アート(media art)

テレビビデオコンピューターなどの媒体を駆使する、1970年代後半からの現代美術の動向。

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精選版 日本国語大辞典 「メディアアート」の意味・読み・例文・類語

メディア‐アート

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] media art ) テレビ、ビデオ、コンピュータ衛星放送などの媒体を駆使する、一九七〇年代後半からの現代美術の動向。媒体において制作される商業美術についてもいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メディアアート」の意味・わかりやすい解説

メディア・アート
めでぃああーと
media art

絵画や彫刻といった伝統的な表現形式と異なり、メディア・テクノロジーを駆使した新しいタイプの美術作品の総称。具体的な表現形態としては、ビデオ・アートコンピュータ・グラフィクス(CG)、サウンドインスタレーション、ライト・アート、ネット・アート(インターネット上に構築されるアート作品の総称)などがその範囲に含まれる。類義語としてはテクノロジカル・アートインタラクティブ・アートが挙げられるが、このうち後者はインターフェースを通じて観客が参加することを作品の成立要件とするジャンルなので、メディア・アートの一領域として考えるほうがより適切である。

 「媒体」を意味する「メディア」は本来表現に対応する概念であり、新種のメディアが開発されるたび、それを芸術表現に生かそうとする試みはいつの時代でも行われてきた。印刷技術の発展や写真技術の開発は芸術表現に大きな変化をもたらしたし、バウハウスのような工房での実験も豊かな成果をもたらした。第二次世界大戦後も、アレグザンダー・コルダーやジャン・ティンゲリーらによるキネティック・アートの制作、派手な幾何学パターンを導入したビクトル・バザレリらのオプ・アート、照明機材の光をインスタレーションに活用したダン・フレービンらのライト・アートなどは、それぞれの時代における最先端の表現の可能性を追究したメディア・アートとして考えることができる。

 そして1980年代以降、メディア・アートの展開はコンピュータをはじめとする最先端のデジタル・メディアの発展と軌を一にしたため、メディア・アートとコンピュータ・アートがほぼ一体化し、同義語となっている。これは、パソコンの普及に伴いツールとしての活用が容易になったことに加え、インターネットを利用した空間拡張やバーチャルリアリティの導入など、コンピュータがもたらす無限の可能性が多くのアーティストの想像力を刺激したことが大きな原因である。その結果として、従来なら美術作品とは思われないような大がかりな機械仕かけの作品が制作、発表される機会も増えた。

 欧米では、デジタル・メディアを活用した美術作品の制作が1980年以後盛んになり、多くのアート・フェスティバルが開催され、またドイツのZKMのような専用施設も開館している。取り組みの遅れていた日本でも、文化庁メディア芸術祭が開催され、また97年(平成9)東京にNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)が開館するなど受け入れ態勢が整った。99年には東京芸術大学に先端芸術表現科が新設され、本格的なメディア・アート教育も開始されるなど、メディア・アートは徐々に市民権を獲得してきた。だがデジタル・メディアを主な制作素材とするメディア・アートはオリジナルとコピーの区別が成立しない点で旧来の美術とは決定的に異なっているうえ、作品評価もまだ技術偏重の観を免れない。メディア・アートの本質を理解し、安易なテクノロジーの礼賛や忌避に陥らない、冷静で客観的な評価基準の確立が必要である。

[暮沢剛巳]

『京都造形芸術大学編『情報の宇宙と変容する表現』(2000・角川書店)』『三井秀樹著『メディアと芸術――デジタル化社会はアートをどう捉えるか』(集英社新書)』

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知恵蔵 「メディアアート」の解説

メディアアート

コンピューターの性能の飛躍的な向上と社会への普及を背景に登場した、新しい芸術表現。コンピューター・グラフィックス(CG)などのデジタル映像や音響を組み合わせたマルチメディアアートや、鑑賞者が触れたり、動いたりすることで作品自体が変化するインタラクティブ(双方向)アートなどが生まれている。1980年代、人工知能に身体性や創発性の要素などをもちこんだ人工生命の研究が進み、その具体例としてアートが注目された。90年代半ばに誕生した関西文化学術研究都市の中にあるATR(Advanced Telecommunications Research Institute International=国際電気通信基礎技術研究所)では、人工生命研究にアーティストが参加した。また96年、CGなどを使った芸術表現やその制作技術を学ぶ岐阜県立の国際情報科学芸術アカデミーが開校、97年、東京にメディアアートを紹介・展示するNTTのインターコミュニケーション・センター(ICC)も誕生した。さらに97年度から始まった文化庁のメディア芸術祭では、アート部門を設けて新しい才能を発掘。2005年に新設された東京芸術大学大学院の映像研究科では、映像作家と共にメディアアーティストの育成を始めた。コンピューターの普及で変容しつつある現代人の知覚の様式や身体感覚などを表現するのに適しているが、現状はテクノロジーが先行し、その技術的解説や応用の域を超えていない作品も多い、という指摘がある。

(山盛英司 朝日新聞記者 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「メディアアート」の意味・わかりやすい解説

メディア・アート

物質性に依拠しない媒体を表現手段として用いる作品を指して生まれた用語。1970年代以降,電子メディアの発達とともにコンピューター技術を活かした表現活動が展開されるようになった。とくに1990年代以降は電子メディアは急速に生活に浸透し,表現媒体としての利用価値が高まっている。コンピューター・プログラムだけでなくCD-ROMインターネットなどの電子メディアや,テレビやラジオなどの電波メディアを活用した表現活動全般を指す。→インタラクティブ・アートテクノロジー・アートビデオ・アート
→関連項目メール・アート

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「メディアアート」の解説

メディアアート

正式社名「メディアアート株式会社」。英文社名「Media Art Co., Ltd.」。情報・通信業。昭和63年(1988)設立。本社は横浜市中区北仲通。ホームページやCD-ROMコンテンツの企画・制作、ソフトウェアの開発を行う。

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世界大百科事典(旧版)内のメディアアートの言及

【コンピューターアート】より

…静止画やアニメーション,SFXを駆使した映像的な作品,空間や装置を使った展示・体験型作品(インスタレーション),そしてインターネット上のアートやCD-ROMのようにデスクトップ上で見ることができるマルチメディア作品である。アプローチ方法によって,ディジタルアート,メディアアート,サイバーアートと呼ばれる場合もある。 〈コンピューターアート〉という言葉が使用されはじめたのは,1968年にイギリスで始まった〈サイバネティックセレンディピティ〉展が世界各地で巡回開催されてからと考えられているが,この展覧会には,プロッター出力されたモノクロの図形やビデオアート,初期のシンセサイザーによる音楽なども含まれ,実験的な要素が強かった。…

※「メディアアート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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