メデイア(エウリピデスの悲劇)(読み)めでいあ(英語表記)Medeia

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

メデイア(エウリピデスの悲劇)
めでいあ
Medeia

古代ギリシアの悲劇作家エウリピデスの悲劇。紀元前431年初演。アルゴ船物語の後日譚(ごじつたん)を素材とする。

 コルキスの王女メデイアは愛するイアソンのために故国を棄(す)て、ペリアス殺しまで犯すが、コリントスに落ち着いたイアソンは蛮族出身の妻を厭(いと)い、王クレオンの娘クレウサとの結婚を策す。棄てられたメデイアは、その復讐(ふくしゅう)に新しい花嫁とその父親を殺し、またイアソンを苦しめるべく自分たちの子供をも殺して、自らはアテネへ逃亡する。

 夫への復讐のため子供を殺すべきか否か逡巡(しゅんじゅん)のあげく、ついに情念(テューモス)の力に負けて殺すくだりは詩人の創作とされるが、ここからこの劇は「情念(テューモス)の悲劇」と称されてもいる。人間の内面の悲劇的葛藤(かっとう)を描くのを旨としたこの詩人にふさわしい代表的傑作である。

[丹下和彦]

『中村善也訳『メデイア』(『世界文学大系1』所収・1959・筑摩書房)』『呉茂一・松平千秋他訳『エウリピデス篇I』(『ギリシア悲劇全集3』所収・1960・人文書院)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android