モシ(民族)(読み)もし(英語表記)Mossi

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モシ(民族)」の意味・わかりやすい解説

モシ(民族)
もし
Mossi

ブルキナ・ファソ(旧オートボルタ)に住むコンゴコルドファンニジェール・コンゴ)語系モレ・ダグバン語を話す農耕民。単一の民族集団としては国内で最大であり、人口は約490万(1994)。このほか国外にも50万以上のモシがいる。古くから(おそらく14、5世紀)王国を形成し今日に至っている。豊富な口頭伝承を有し、少なくとも過去500年のモシの歴史が語り伝えられている。おもだった首長の歴史伝承を保持しているのは、ベンダとよばれる特殊な父系血縁集団の語部(かたりべ)にして楽師である。彼らは巨大なひょうたんの太鼓をたたきながら朗唱を行う。モシの土地は乾燥しやせているため、細々と農耕を続けているにすぎないが、交易は15世紀以前から盛んで、北アフリカや南の森林地域の諸民族を結び付けてきた。首長は市場取引に税をかけることができたので、交易は政治的にも重要だった。モシの商人は、16世紀に定住したヤルセとよばれるマンデ語系のイスラム教徒で、彼らによってモシにイスラム教が広まった。モシ社会にはヤルセ以外にも鍛冶(かじ)屋や牧畜専門のフラニのような多くの集団が混合し、ある程度の経済的分業が生じている。結婚リネージ系族)間の交換の形で行われるのが普通であるが、首長の場合には「ポグ・シウレ」とよばれる制度によって首長が女性臣下配偶者として与え、生まれた第1子が臣下から首長に差し出される。

加藤 泰]

『川田順造著『無文字社会の歴史』(1976・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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