チグリス川沿いに位置するイラク北部最大の都市で、首都バグダッドに次ぐ同国第2の都市。スンニ派イスラム教徒のアラブ人が多数派だが、周辺地域を含めシーア派、クルド人、キリスト教徒も住む。2015年の推定人口は約170万人。過激派組織「イスラム国」(IS)の前身組織が14年6月に制圧、ISが重要拠点としてきた。指導者バグダディ容疑者が旧市街のイスラム教礼拝所「ヌーリ・モスク」で自らを「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」と宣言し、同モスクはIS支配の象徴となった。イラク軍などは昨年10月、モスル奪還作戦を開始した。(共同)
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イラク北部の都市で、ニナワ(ニネベ)州Ninawa(Nineveh)の州都。正式にはアル・マウシルAl-Mawsilという。人口66万4221(1987センサス)、179万1600(2003推計)。ティグリス川の右岸、クルディスターン山地の南麓(なんろく)に位置し、年降水量は400ミリメートルと比較的多い。北部イラクの経済の中心地で、周辺の豊かな農牧地帯で産する小麦、大麦、ゴマ、キビ類、リンゴ、オレンジ、家畜などが集散される。モスリンの名で知られる優れた綿布の生産はいまは廃れてしまったが、皮革、ナイロン、製糖、セメントなどの工業が発達している。1939年北郊のアインザーラで油田が発見されて以来、油田採掘の基地として、また北部の工業化の拠点として著しい発展をみせた。交通の要衝でもあり、南のバグダードから通じる鉄道は、北西のシリア、トルコへと延びている。住民はアラブ人が多数を占めるが、クルド人の割合も多い。
アッシリア帝国の都であったニネベの遺跡がティグリス川の対岸にあり、この地域一帯は古代オリエント文明発祥の地として古い歴史をもつ。モスルは、シリアとイランを結ぶ隊商路とティグリス水運の交差点にあり、古くから商業都市として栄えた。7~8世紀ウマイヤ朝下で州都となって最盛期を迎え、10~11世紀には地方王朝の都とされた。しかし13世紀にはモンゴルが侵入し、16世紀以降はトルコに支配され、東西交渉ルートも海路に移り衰退した。第一次世界大戦後、トルコから返還され、イラク北部の中心都市として再生した。
[原 隆一]
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