ユーザンス(英語表記)usance

翻訳|usance

デジタル大辞泉 「ユーザンス」の意味・読み・例文・類語

ユーザンス(usance)

期限付手形における支払期日までの支払猶予期間
支払猶予
貿易代金の支払猶予金融。

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精選版 日本国語大辞典 「ユーザンス」の意味・読み・例文・類語

ユーザンス

〘名〙 (usance)
① 期限付為替手形満期までの期間。支払期限。
一覧払い輸入手形に対する支払いを延長する措置
※天の上の天(1963)〈陳舜臣〉三「ユーザンスが切れてまだ処分のできない輸入品のことで」

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改訂新版 世界大百科事典 「ユーザンス」の意味・わかりやすい解説

ユーザンス
usance

手形の支払条件として一覧払でなく,一覧後1ヵ月とか3ヵ月とか一定期間支払いの猶予が認められる場合,その支払猶予期間を,本来はユーザンスというが,今日ではその語義から転じて,広く貿易金融の形式を指すことが多い。このように支払猶予が認められた手形は,一覧払手形sight billに対して期限付手形usance billと呼ばれる。貿易金融の方式としてのユーザンスは,金融を行う者を基準としてシッパーズ・ユーザンスshipper's usanceと銀行ユーザンスbank usanceに大別され,後者はさらにその具体的な方法によりアクセプタンス方式リファイナンス方式,本邦ローン方式,B/Cディスカウント方式などに分かれる。

 シッパーズ・ユーザンスは,海外の輸出業者が輸入業者に対して直接支払いを猶予する方式であり,その具体的な方法としては輸出業者が輸入業者あてに期限付手形を振り出し,それを銀行経由で取り立てる方法と,輸出業者が輸出貨物を化体する船積書類を直接輸入業者に送付し,一定期間後輸入業者が輸出業者あてに送金する方法がある。アクセプタンス方式は,あらかじめ結ばれた取決めの下で輸入地の銀行が発行する信用状の条件に従い輸出業者が期限付手形を振り出し,これを外国の銀行に引受けないし割り引いてもらうことにより,輸出代金を回収する一方,その手形の期日まで支払いの猶予を受けるものである。外銀ユーザンスとも呼ばれる。リファイナンス方式のユーザンスはポンド地域からの輸入に用いられ,信用状に基づいて振り出された一覧払手形を輸入業者はただちに決済する一方,あらかじめロンドンの銀行あてに送付しておいた期限付手形を一覧払手形の決済と同時に割り引いてもらい,その支払期日まで金融を受けるものである。本邦ローン方式とは,日本の輸入業者などが,例えば輸出業者が信用状に基づいて振り出した一覧払手形を決済した後,ただちに日本の取引先銀行から一定期間同額の外貨金融を受けるものである。いわば日本の銀行が輸入業者の立替払いを行うものである。B/Cディスカウント方式はB/Cユーザンスとも呼ばれ,日本の銀行の海外支店が主として輸入業者の海外支社などが振り出した期限付手形を買い取り,それを取立手形bill for collection,B/Cとして日本の銀行に送付し,手形期日に送金を受ける方式をいう。このような貿易金融の方式としての各種のユーザンスは,またその金融を直接受ける者の別によって輸出ユーザンス(上例ではB/Cディスカウント方式)と輸入ユーザンス(シッパーズ・ユーザンス,アクセプタンス方式,リファイナンス方式および本邦ローン方式)とに分かれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユーザンス」の意味・わかりやすい解説

ユーザンス
ゆーざんす
usance

本来は、手形が一覧払いでなく、一覧後3か月とか4か月とか一定期間支払いの猶予を認められる場合に、その支払猶予期間をさす。このような手形を一覧払手形sight billに対して期限付手形usance billとよぶ。

 しかし、今日ではその語義から転じて、支払猶予、支払繰延金融、または一定期間の信用の供与などの意味に用いられている。

 貿易決済におけるユーザンスには、シッパーズ・ユーザンスshipper's usance、外銀ユーザンス、邦銀ユーザンスなどがある。シッパーズ・ユーザンスは、輸出業者(シッパー)が銀行を介在せずに直接輸入業者に信用を与え、一定期間代金の支払いを猶予するものである。外銀ユーザンスは、輸出業者が期限付手形を振り出す場合であって、手形が満期になるまでの金利は輸入業者が負担するが、手形は輸出地の外銀が買い取り、輸入業者にかわって外銀が輸出業者に代金を前払いする。つまり、支払猶予期間は外銀が輸入業者に対して信用を供与したことになる。邦銀ユーザンスは、輸出地の邦銀が外銀ユーザンスと同様の信用を輸入業者に対して供与することである。

 なお、このほかに、かつては日銀ユーザンスというのがあった。これは、前記の各ユーザンスが不可能な場合、日本銀行が外国為替(かわせ)銀行へ貸し出すことによって、輸入業者の輸入手形決済を一定期間猶予させる制度であった。輸入業者はこの期間中に着荷を処分することができるので、支払いが容易になる。しかし、この日銀ユーザンスは、中央銀行信用であるだけに他のユーザンスとは異なって特殊なものであり、1954年(昭和29)に全廃されて輸入決済手形制度となったが、さらに66年以降はその取扱いも停止された。

[土屋六郎]

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百科事典マイペディア 「ユーザンス」の意味・わかりやすい解説

ユーザンス

ユーザンスとは手形の支払期限のことであるが,転じて一般に貿易の決済に用いられる期限付手形(ユーザンス・ビル)をさし,ふつう一覧後定期払いの形をとる。輸入ユーザンスともいう。輸入商はこの手形の利用によって長期かつ低利の外貨の融通を受けられ,国内で輸入商品を売却後,代金を支払えばよい。外銀ユーザンス,邦銀ユーザンス(輸出地所在の邦銀海外支店が輸入商に信用を供与),シッパーズユーザンス(輸出商が輸入商あてに振り出した輸出手形そのものを一覧後定期払いとすること)等の種類がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユーザンス」の意味・わかりやすい解説

ユーザンス
usance

本来は手形の支払期限をいうが,一覧払手形に対する期限付為替手形 usance exchange billの意味に転化し,さらに外国為替銀行が信用を供与し,一定期間支払いを猶予する場合に用いられることが一般化した。輸出為替にユーザンスがつけられることを輸出ユーザンスといい,輸入為替につけられることを輸入ユーザンスという。

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