ヨウ化水銀(読み)ようかすいぎん(英語表記)mercury iodide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ化水銀」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化水銀
ようかすいぎん
mercury iodide

水銀ヨウ素の化合物。一価および二価の化合物が知られている。

(1)ヨウ化水銀(Ⅰ) 黄色ヨード汞(こう)ともいう。化学式Hg2I2、式量655.0。黄緑色粉末硝酸水銀(Ⅰ)水溶液ヨウ化カリウム水溶液を加えるか、エタノールエチルアルコール)中でヨウ素と水銀を練り合わせて得られる。[I-Hg-Hg-I]のような分子がある。ヨウ化カリウム水溶液を加えると次のように不均化して、溶けると同時に水銀を析出して黒色となる。

Hg2I2+2KI―→K2[HgI4]+Hg
 水にほとんど不溶。エタノール、エーテルに不溶。アンモニア水に溶ける。医薬品として用いられることがあるが、ヨウ化カリウムを併用してはいけない。

(2)ヨウ化水銀(Ⅱ) 化学式HgI2、式量454.4。赤色結晶。この赤色のものは常温で安定であるが、熱すると126℃で黄色のものに変わる。水に難溶、熱無水エタノールにはかなり溶ける(25℃, 1.8g/100g)。エーテル、アセトンに不溶、チオ硫酸ナトリウム水溶液に可溶。126℃以上に熱して得られる黄色のものは、黄色ヨウ化水銀とよばれ、黄色斜方晶系微結晶である。融点259℃、沸点354℃。比重6.271。ヨウ化カリウム水溶液でヨード水銀(Ⅱ)錯塩をつくる。

[中原勝儼]

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化学辞典 第2版 「ヨウ化水銀」の解説

ヨウ化水銀
ヨウカスイギン
mercury iodide

】ヨウ化水銀(Ⅰ):Hg2I2(654.99).冷却した硝酸水銀(Ⅰ)水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると,黄色の正方晶系の粉末として得られる.密度7.7 g cm-3.融点290 ℃.光により分解してHgとHgI2になりやすい.水に不溶.医薬品(外用薬)として用いられる.劇薬.[CAS 15385-57-6]【】ヨウ化水銀(Ⅱ):HgI2(454.40).硝酸水銀(Ⅱ)水溶液にヨウ化アルカリを加えると得られる.塩化水銀(Ⅱ)水溶液にヨウ化アルカリを加えてもよい.最初黄色形のHgI2が生じ,すぐに赤色形にかわる.赤色形(正方晶系)が常温では安定で,127 ℃ で黄色形(斜方晶系)に転移する.赤色形は密度6.28 g cm-3.黄色形は密度6.27 g cm-3.融点253 ℃,沸点349 ℃.水にほとんど不溶,エタノールに微溶.ヨウ化アルカリ水溶液には[HgI42-]になって溶ける.ネスラー試薬,マイヤー試薬,写真増感剤,分析試薬,医薬品(軟膏)などに用いられる.毒物.[CAS 7774-29-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨウ化水銀」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化水銀
ヨウかすいぎん
mercury iodide

(1) 二ヨウ化二水銀 (I) ,ヨウ化第一水銀 化学式 Hg2I2 。鮮黄色の結晶。光に当てると黒変するか,あるいは緑色を帯びる。比重 7.70,融点 290℃ (一部分解) 。水,アルコールに不溶。劇薬。 (2) ヨウ化水銀 (II) ,ヨウ化第二水銀 化学式 HgI2 。緋赤色の粉末。 130℃で黄色,冷却すると赤色となる。猛毒。比重 6.28,融点 259℃。一般に水に難溶であるが,ヨウ化水銀とヨウ化カリウムの複塩 K2HgI4・2H2O は水,アルコールに易溶である。これを水酸化カリウムの溶液に溶かしたものはネスラー試薬といわれ,アンモニアの検出剤として重要である。

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