ラニーニャ現象(読み)ラニーニャゲンショウ(その他表記)La Niña events

デジタル大辞泉 「ラニーニャ現象」の意味・読み・例文・類語

ラニーニャ‐げんしょう〔‐ゲンシヤウ〕【ラニーニャ現象】

La Niña events》赤道付近のペルー沖から中部太平洋にかけて、数年に1度、海水温が平年より低くなる現象。低下する温度差はエルニーニョ現象での上昇温度差より一般的に小さい。→ダイポールモード現象
[補説]エルニーニョ現象と反対に、この海域の暖水を西に移動させている貿易風が強まることで、深海からの湧昇が増加して海水温が下がる。エルニーニョが「幼子キリスト」もしくは「男の子」の意であることから、「女の子」の意のラニーニャと名付けられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラニーニャ現象」の意味・わかりやすい解説

ラニーニャ現象
らにーにゃげんしょう
La Niña events

日付変更線より東の太平洋赤道海域で、平均海水温度が、ふつう6か月ほど連続して0.5℃くらい平年より低くなる現象。これとは対照的に、同じ海域で海水温度が高くなる現象はエルニーニョ現象とよばれる。エルニーニョ現象の語源がスペイン語の男の幼子に由来することから、スペイン語で女の幼子を意味するラニーニャが語源である。ラニーニャ現象やエルニーニョ現象は、日本を含め世界中の異常な天候の要因になりうると考えられている。

 エルニーニョ現象は19世紀末から漁業関係者によって取り上げられてきたが、ラニーニャ現象は1984年夏から1985年夏、さらに1988年春から1989年春にかけておきたときから注目されるようになった。

 平常時の熱帯域は、貿易風とよばれる東風がつねに吹いており、海面付近の温かい海水が太平洋の西側に吹き寄せられている。このため、西部のインドネシア近海では温かい海水が蓄積し、東部のペルー沖ではこの東風と地球の自転の効果で深い所から冷たい海水が湧(わ)き上がっていることから、海面水温は西で高く東で低くなっている。

 ラニーニャ現象が発生している時は、東風が平常時より強くなり、太平洋赤道域の西部に温かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい海水の湧き上がりが平常時より強くなる。このため、太平洋赤道域の中部から東部では海面水温が低くなって大気の対流活動が不活発となり、西部のインドネシア近海の海上では、積乱雲がいっそう盛んに発生する。

 ラニーニャ現象が発生すると、日本付近では、夏季は太平洋高気圧が北に張り出しやすくなり、気温が高くなる傾向がある。沖縄・奄美(あまみ)地方では南から湿った気流の影響を受けやすくなり、降水量が多くなる傾向がある。一方、冬季西高東低冬型気圧配置が強まり、気温が低くなる傾向がある。

 近年における顕著なラニーニャ現象は、1954年春~1956年夏、1970年春~1971/1972年冬、1984年夏~1985年夏、1988年春~1989年春、2007年夏~2008年春、2021年秋~2022/2023年冬におきた。

饒村 曜 2024年2月16日]

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知恵蔵mini 「ラニーニャ現象」の解説

ラニーニャ現象

南米沖(南米沿岸から太平洋赤道域の日付変更線付近までの細長い帯域)の海面水温が平年より低くなる現象のこと。逆に同帯域の海面温度が高くなるものはエルニーニョという。数年おきに発生し1年~3年ほど続く。ラニーニャ現象が発生すると、アフリカ南部や東南アジア、沖縄、南アメリカなどには冷たく湿った空気が流れ込み、平年より雨量が多くなる傾向がある。対して日本本土などでは、平年より梅雨が短くなり夏の気温が高くなるといった影響が現れやすくなる。2007年に発生したラニーニャによって、日本は観測史上最高気温を記録する猛暑となり、タイは記録的豪雨となるなど世界的に大きな影響が出た。以後は、10年夏~11年秋、13年春~14年冬に発生しており、16年夏にも発生する可能性が高いとみられている。

(2016-4-14)

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