デジタル大辞泉
「リウマチ熱」の意味・読み・例文・類語
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リウマチ‐ねつ【リウマチ熱】
- 〘 名詞 〙 膠原病の一つ。溶連菌の感染による扁桃炎にかかったあと、二~四週間してから高熱が出て、関節痛・心膜炎などの症状が現れる自己免疫性疾患。後遺症として心臓弁膜症を起こすことが多い。
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「リウマチ熱」の解説
りうまちねつ【リウマチ熱 Rheumatic Fever】
◎アレルギー反応の一種
[どんな病気か]
リウマチ熱は、のどに溶連菌(ようれんきん)(A群β(ベータ)型)という細菌の感染をくり返しているうちに発病する病気で、一種のアレルギー反応によって生じる炎症です。
初めは、高熱と関節炎(かんせつえん)が現われ、特徴のある発疹(ほっしん)がみられます。心臓がおかされると、後遺症として心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)をひきおこすことがあります。
学童期の子どもがかかることが多く、幼児以下の子どもやおとなは、あまりかかりません。また、患者数に男女の差はありません。
春と、秋から冬にかけて発病することが多く、A群β溶連菌感染症が流行しているときは、感染している人の2~3%がこの病気になります。社会経済的条件が悪い地域に多くみられる病気で、抗生物質が発達した現在、日本では患者数が減っています。
一方、アメリカでは、軍隊内で集団的に発病したという報告もあります。
[原因]
溶連菌の細胞膜(さいぼうまく)にある抗原(こうげん)たんぱくと、人の心筋、血管壁、関節滑膜(かつまく)、脳の一部の組織が似ているため、溶連菌(抗原)を排除するためにからだの免疫のしくみによってつくられた抗体が、自分の組織を抗原とみなして反応し、生じる病気だと考えられています。
しかし、溶連菌の感染者が、全員発病するわけではなく、遺伝的素因をふくめて、いろいろな因子が関係して発病すると考えられています。
[症状]
咽頭炎(いんとうえん)や扁桃炎(へんとうえん)の後、2~3週間後に、全身のだるさ(倦怠感(けんたいかん))、食欲不振とともに、38~39℃の発熱と関節痛が現われます。膝(ひざ)、足、股(また)、手、肘(ひじ)、肩などにある大きな関節がおかされ、赤くなったり、腫(は)れをともなうこともあります。1~5日で、痛むところが移動します。
輪状紅斑(りんじょうこうはん)という発疹(ほっしん)ができるのが特徴です。これは、不規則な紅斑で始まり、しだいに輪のような形になる発疹で、躯幹(くかん)(胴体(どうたい))や手足にみられます。
発病して1~2週間すると、半数近くの患者さんが心炎(しんえん)をおこします。頻脈(ひんみゃく)(いわゆる脈が速い状態)、心臓の拡大、聴診による心雑音がみられ、心電図の異常がみられます。
この炎症が、心臓の弁膜(べんまく)を傷害することがあり、心臓弁膜症(「心臓弁膜症とは」)をひきおこすことがあります。
また、皮下小結節(ひかしょうけっせつ)が、手足の関節の伸ばす側にできます。大きさは、エンドウ豆くらいで、痛みはなく、移動することがある結節です。
感染後2~3か月後に、5~10%の患者さんに神経症状が現われます。小舞踏病(しょうぶとうびょう)といわれ、意志とは無関係に踊るような不随意運動(ふずいいうんどう)が、上肢(じょうし)(腕)や顔面に突然おこり、動こうとすると、その症状がひどくなります。
[検査と診断]
白血球数(はっけっきゅうすう)の増加、CRP(からだに炎症が生じると血中に増えるC反応性たんぱく)の増加、血沈(けっちん)(血液沈降速度(けつえきちんこうそくど))の上昇などがみられます。
溶連菌が感染した証拠として、ASO(アンチストレプトリジン・O)、ASK(アンチストレプトキナーゼ)、ADN‐B(アンチデオキシリボヌクレアーゼ‐B)といった抗体が、血液中に増加します。
心炎の診断には、心電図、胸部X線写真、心エコー検査、心音図が用いられます。そのうえで、咽頭(いんとう)からとった液などを培養して、A群溶連菌が見つかれば、診断は確定します。
診断には、ジョーンズの診断基準が参考になります(表「リウマチ熱診断基準」)。
◎安静、保温、薬物療法が基本
[治療]
治療の原則は、安静と保温です。原因となる溶連菌に対し、1日80~120万単位のペニシリンを、2週間内服します。
その後も、再発を防ぐため、20~40万単位のペニシリンを毎日内服します。内服を続ける期間は、心炎のない場合は5年間です。
心炎があっても、心雑音が残らなければ、20歳まで(15歳以上で発病したら20歳をすぎるとしても5年間)服用します。
リウマチ性心疾患が残ってしまったら、30歳までの服用ですが、できれば生涯服用を続けます。
リウマチ熱の症状を抑えるためには、アスピリンとステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)が使われます。
[日常生活の注意]
再発を予防するには、ペニシリンの内服を続けることがたいせつです。内服をしないでいると、50%以上が1年以内に再発し、再発をくり返すごとに心臓が悪くなっていきます。
子どもの場合、ステロイド薬の使用を中止してから6か月がすぎたら、心臓の障害の程度によって、どの程度の運動ならしてもよいか決めることができます。
心臓の拡大がみられない弁膜症であれば、水泳、マラソン、競走などの激しい運動だけを禁じます。
心雑音がない子どもは、健康な児童と同様に運動してもかまいません。
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リウマチ熱
りうまちねつ
rheumatic fever
A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)による扁桃(へんとう)を中心とした上気道感染に個体の免疫応答が加わって発症する全身性の炎症疾患で、膠原(こうげん)病の一つとされる。かつて急性関節リウマチとよばれたこともある。溶連菌感染後に発症するが溶連菌感染症ではなく、溶連菌の毒素に対する抗体が発症に関連するものとみられており、溶連菌は検出されない。溶連菌感染者の3%前後が発症し、5~15歳の小児に多い。後遺症としてリウマチ性心疾患(とくに心臓弁膜症)が多くみられるのが特徴である。
[高橋昭三]
典型的な場合は、上気道炎の治癒後2~3週経過してからふたたび発熱するのがリウマチ熱の始まりで、関節炎をおこしてくる。誘因となる上気道炎は、ほとんど症状がなくて気づかれない場合もある。リウマチ熱の関節炎は移動性多発性関節炎で、膝(しつ)関節や股(こ)関節のほか、足首や手首、肘(ひじ)や肩など四肢の大きな関節が次々に腫(は)れて痛む。心雑音の聞こえる心炎も重要な症状で、心臓の弁膜や筋肉が侵される。皮膚症状としては輪状紅斑(こうはん)と皮下結節がみられる。輪状紅斑は種々の大きさで、痛くもかゆくもなく、早期に消失しやすいため注意していないと見逃すことがある。皮下結節は関節付近の皮膚下に現れ、小さなエンドウマメ大である。発症してから数か月後に小舞踏病がみられることがある。これは無意識のうちに手足が動いたり顔をしかめたりするもので、女児に多くみられる。以上がおもな症状で、大症状ともよばれるが、そのほかに鼻出血、胸痛、腹痛などをおこすこともある。
リウマチ熱の症状は、放置しても1~3か月のうちに大部分の人は自然治癒するが、心炎をおこしたときに治療を十分に行わないと、治癒後に心臓弁膜症を残すことになる。
[高橋昭三]
血沈、CRP(C反応性タンパク試験)、白血球数、胸部X線、心電図などの検査も行われるが、もっとも重要なのはASO値の検査である。溶連菌は血液を溶血させる毒素(ストレプトリジンO)を出すが、溶連菌感染をおこすと、この溶血素に対する抗ストレプトリジンO(略称ASOまたはASLO)という抗体が血液中に出てくる。したがって、このASO値が高くなれば溶連菌感染をおこしていたことがわかる。このASOの高値と前述の大症状のどれかがあれば、リウマチ熱の確実な診断が行われる。
[高橋昭三]
心炎の発症および進展防止が治療の根本となる。心炎があれば副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤を用い、心炎がなければアスピリン製剤が使われる。一般には、栄養のバランスのとれた食事を与え、安静を守らせる。心炎をおこしていなければ2、3か月で普通の生活に戻れるが、心炎があればまず絶対安静にし、以後は医師の指示によってその程度を下げていき、全治しても約半年は安静を心がける。
リウマチ熱は再発のたびに心臓弁膜症を残す率が高くなるので、初回の段階で溶連菌を根絶させるために十分量の抗生物質(とくにペニシリン)を少なくとも10日間は投与する。小児では再発により新しく心炎をおこしてくることもあるので、治癒後も引き続き成人に達するまで定期的に医師のチェックを受け、ペニシリンの予防内服を行う。ただし、心理的圧迫を与えない配慮が必要である。なお、軽い心臓弁膜症が残った場合は再発のたびに悪化するので、一生ペニシリンによる防止を続ける必要がある。
[高橋昭三]
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リウマチ熱 (リウマチねつ)
rheumatic fever
RFと略記する。A群溶血性連鎖状球菌(溶連菌)の感染後に発症するリウマチ性疾患。すなわち,溶連菌に対する抗体が心筋に反応して(共通抗原性による)炎症反応を起こすと考えられている。しかし,溶連菌感染者の2~3%に発症するのみである。病理組織学的に膠原病(こうげんびよう)の一つと考えられている。好発年齢は5~15歳で,男女差はない。開発途上国に多く,日本ではリウマチ熱からくる心臓疾患の頻度は近年著しく低下している。
リウマチ熱の症状
咽頭への溶連菌感染後1~2週間で持続的な発熱(38℃を超えることが多い)をもって始まり,痛みや腫張がいくつかの関節を移動していく多発性関節炎(大きな関節が侵されやすく,変形を残さないで軽快する)が発生する。特異的な輪状をした皮膚の紅斑(痛みはなく,かゆみもない)は,体幹や四肢の体幹に近い部分にできるが,消えやすい。皮下の結節は,痛みはなく,ひじ,ひざ,手足など関節部の伸側にできるが,数日から数週間で消失する。皮膚の症状は注意してみないと見逃しやすい。心炎がある場合には心雑音を聞くことができる。まれではあるが死亡例もあり,重症な心臓弁膜症,全身臓器の循環不全,感染症が原因となることが多い。このほか小舞踏症は感染後2~6ヵ月に突然発症することが多い。小舞踏病の症状としては,顔の奇妙な表情,不安定な興奮状態にあるような動作,顔貌がみられる。この症状は,数週から数ヵ月間持続する。その他の症状として,胸部痛,腹痛,頭痛,食欲不振,倦怠感,動悸などがある。
診断,検査,治療
診断については診断基準があり(大症状と小症状とがある),それによって診断される。溶連菌感染を示す項目(抗溶連菌抗体ASOの上昇,菌の咽頭培養陽性など)がポイントとなる。小舞踏病と長期にわたる軽い心炎があるときはそれだけで診断できる。
検査では,ASO陽性,血沈亢進,CRP陽性,白血球数増加,心電図での変化(PR延長)が重視される。ASO値が高値をとるか,ASO値の漸次的増加は,感染の存在を示すものとして重視される。
リウマチ熱の治療は,心炎とその後にくる病変とを予防することに重点がおかれる。そのために感染に対してペニシリン系の薬剤などが使用される。また炎症の抑制にアスピリン製剤,副腎皮質ホルモン剤が使用される。このほか活動期には安静,適切な栄養の摂取が必要である。一度治癒しても再び溶連菌の感染が起こると心炎を起こすことが多いので再感染に対する予防が必要で,このため一度リウマチ熱になったら,小児では成人になるまで,また18歳以上のものでもそのあと5年間は服薬することが望ましい。
予後は,初回発症のときに早期に治療を十分に行えば良好である。再感染に対する予防的処置(継続的投薬など)を行えば再発はほとんどない。軽い心炎の後遺症がある場合,就学や体育などは専門医によってその程度がきめられ,長期観察を必要とするが,患者に心理的圧迫をもたせないようにすることがたいせつである。
執筆者:広瀬 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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リウマチ熱(小児のリウマチ性疾患)
定義・概念
リウマチ熱は,A群溶血性連鎖球菌性咽頭炎の2〜3週間後に続発する炎症性疾患で,菌に対する免疫応答が臓器組織に交差反応することで発症する.双生児を対象としたメタアナリシスによりリウマチ熱の発症は遺伝的背景が強いことが証明されている.わが国では希少疾患になったが,途上国では社会的問題になるほどの頻度で発生している.
臨床症状・診断
先行するA群溶血性連鎖球菌の感染の証明(血清ASO,ASK)が必須である.症状は心炎(心内膜炎,心筋炎,心外膜炎)と関節炎が最も頻度が高く,ついで小舞踏病,輪状紅斑,皮下結節の順である.多関節炎では若年性特発性関節炎,反応性関節炎,若年性皮膚筋炎,混合性結合組織病,また風疹,パルボウイルスB-19などのウイルス感染に伴う関節炎を鑑別する.心炎の評価は心エコー,心電図が用いられ,心炎の存在と三尖弁と大動脈弁の逆流を評価する.心炎は急性期の心不全,死亡原因,また弁膜障害(僧帽弁閉鎖不全,大動脈弁閉鎖不全)は後天性心疾患の原因となる.診断にはJonesの診断基準が用いられる(表10-19-2).
治療
A群溶血性連鎖球菌の除去および再感染防止に経口ペニシリンを用いる.リウマチ性炎症に対してはサリチル酸薬(アスピリン),特に心炎にはステロイド(プレドニゾロン)が基本になる.心炎を伴った例はリウマチ熱再発予防のため,20歳になるまでペニシリン内服を続ける.小舞踏病に対してはフェノバルビタールを用いる.
1)急性期の治療:
抗菌療法にはベンジルペニシリン,アモキシシリン,エリスロマイシンのいずれかを選択する.ペニシリン過敏症例にはエリスロマイシンを用いる.抗炎症療法として心炎にはプレドニゾロンを用いる.関節炎についてはアスピリンを使用する.小舞踏病にはフェノバルビタール散を用いるが,重症例にはとプレドニゾロンを加える.
2)再発予防:
心炎のない例では18歳まで,心炎を伴った例で弁膜症を残さなかった例では20歳まで,弁膜症や手術例では一生涯傾向ペニシリン系抗菌薬またはエリスロマイシンの予防内服を継続する.[横田俊平]
■文献
Kahn P: Juvenile idiopathic arthritis: an update on pharmacotherapy. Bull NYU Hosp Joint Dis, 69: 264-276, 2011.
Yokota S, Imagawa T, et al: Efficacy and safety of tocilizumab in patients with systemic-onset juvenile idiopathic arthritis: a randomized, double-blind, placebo-controlled, withdrawal phase III trial. Lancet, 371: 998-1006, 2008.
Engel ME, Stander R, et al: Genetic susceptibility to acute rheumatic fever: a systemic review and meta-analysis of twin studies. PLoS ONE, 6: 1-6, 2011.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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リウマチ熱
リウマチねつ
rheumatic fever
溶血性レンサ球菌感染症の2~3週間後に現れる自己免疫疾患で,心臓弁膜症の原因となることが多い。小児期に好発する。 40℃程度の高熱に始り,心炎,各種の関節炎 (ことに大関節) ,ときとして舞踏病なども伴う。口,咽頭,副鼻腔,腎盂などに原発巣をもつことがあり,この場合は感染巣の治療をまず行う。急性期の炎症にはステロイドの使用もやむをえないが,できるかぎりすみやかに離薬,抗生物質などに置換を試みる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のリウマチ熱の言及
【膠原病】より
…1941年にクレンペラーP.Klempererが提唱した疾患。病理学的に結合組織にフィブリノイドfibrinoid変性がみられる疾患という定義がなされ,全身性[エリテマトーデス],慢性[関節リウマチ],[皮膚筋炎]または多発筋炎,強皮症(全身性進行性硬化症),結節性動脈周囲炎,[リウマチ熱]の6疾患が代表的な膠原病とされた。その後,病理学的にもフィブリノイド変性という概念がきわめてあいまいなものであり,膠原繊維にのみ変化がおこるものではないところから,結合織疾患connective tissue diseaseとよぶほうが正しいとされ,国際的にはそのようによばれることが多い。…
【猩紅熱】より
…A群β[溶連菌]の感染による法定伝染病。この溶連菌の感染で発病するものにはほかに咽頭炎,扁桃炎,丹毒,急性糸球体腎炎などがあり,さらに反復感染の後にリウマチ熱を起こすこともある。この菌で猩紅熱になることはむしろ少なく,また近年,本症は軽症化が目立ち,不完全型が多くなって,猩紅熱と診断されずに溶連菌感染症といわれている場合もある。…
※「リウマチ熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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