金属リチウムを負極に用いず,正極および負極の両者ともリチウムを含む化合物を用いた二次電池.1991年,日本ではじめて実用化された.この電池は軽量で,エネルギー密度が高いため,ノートパソコン,携帯電話などの携帯機器用の電源として幅広く用いられている.一般に使用されているリチウムイオン電池では,負極に黒鉛を代表とする炭素材料,正極にリチウムコバルト酸化物,電解液にリチウム塩を有機溶媒に溶解した有機電解液が使用され,平均放電電圧は3.6~3.7 V である負極の黒鉛を C6,リチウムコバルト酸化物をLiCoO2で表すと,自発反応である放電時の電極反応式は次のとおりとなる.
負極 LixC6 → C6 + xLi+ + xe-
正極 Li1-xCoO2 + xLi+ + xe- → LiCoO2
全体 LixC6 + Li1-xCoO2 → C6 + LiCoO2
充電時にはこの逆の反応がほぼ可逆的に起こる.負極・正極のどちらも層状構造を有しており,その層間にあるリチウムイオンが放電時には負極から正極に移り,充電時には逆に正極から負極へ移動する.結晶構造を保ったまま電極のなかへリチウムイオンが取り込まれる反応をインターカレーション反応,電極からリチウムイオンが放出される反応をデインターカレーション反応という.リチウムイオン電池の動作原理はこのような可逆的なリチウムイオンのインターカレーション・デインターカレーション反応にもとづく.電解質として有機電解液のかわりにポリマー電解質を用いたポリマー電池が実用化されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
(葛西奈津子 フリーランスライター / 2013年)
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