翻訳|ribbon
テープ状の織物。女性や子供の装飾品、アクセサリーとして衣服や帽子、頭髪に結び付けたり、贈答品にかけたり、勲章につける。幅は2ミリメートルぐらいから、30センチメートル以上のものまである。
[市川久美子]
ササン朝ペルシアの、アルデシール1世の叙任式(226)に王権のしるしとして天使が王に錫(しゃく)とリボンのついた王冠を授与する図が残っているが、中世でも格言や標語を書いたリボンが権威の象徴として用いられた。勲章のリボンはその名残(なごり)であろう。古代ギリシア・ローマ時代には、すでに頭髪をリボンとピンで美しく結っている。中世になると、男子もリボンを用いるようになり、襟や袖口(そでぐち)などもリボンで飾っていた。日本にリボンがもたらされ一般に使用されたのは明治以降であるが、それ以前も、外国奉行(ぶぎょう)だった山鹿(やまが)素行(江戸時代の儒者、兵法学者)が入手し日本で加工したうえ愛用した陣羽織の袖口には、二重のリボンがフリルのようについていたという。
[市川久美子]
サテン、タフタ、ベルベット、グログランなどの絹織物、綿のサテンやオーガンジー、レースなど綿織物、さらに化学繊維、金・銀ラメ、ナイロン・レース、ポリエステル・レース、あるいは不織布など、素材はさまざまである。種類も豊富で、無地、縞柄(しまがら)、花柄、水玉、レースなど多種多様。
また、リボンで造花をつくるリボン・フラワーや、リボンを糸のかわりに使うリボン刺しゅうなどもある。
[市川久美子]
薄地の細い幅の織物で,おもに髪や帽子,衣服,履物などの装飾や商品の包装などにも用いられる。絹,サテン,タフタ,ビロード,モアレ,レーヨンなど素材や織り方は種類が多い。リボンはすでに古代ギリシアで使われており,女性の小さくまとめた髪形に飾りとしていた。中世でも衣服の衿元や縁などに,装飾とその部分を他と区別するために縁どりとして用いられた。騎士は身分をあらわすために首や肩からリボンをかけ,勲章を吊るした。リボンを織る機械がいつごろつくり出されたかは不明であるが,17世紀には普及していたとみられ,オランダでは1620年ごろ使用していたという。リボンが容易につくり出されるようになって,17世紀にはリボンがふんだんに使われた。男性のはくスカート状のラングラーブrhingraveと呼ばれる下衣には,いたるところにリボン飾りがつけられ,靴にもバラの形にしたリボンがつけられた。18世紀の女性のロココ・スタイルには装飾としてのリボンが欠かせなかった。帽子にさえも6ヤード(約5.5m)のリボンを使ったと記録されている。以来,リボン飾りは女性や子ども服の装飾には不可欠のものであったが,現代では衣服自体の装飾よりも帽子や髪飾,持ち物,履物などアクセサリーとして使われている。
執筆者:池田 孝江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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