ル・ナン(兄弟)(読み)るなん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ル・ナン(兄弟)」の意味・わかりやすい解説

ル・ナン(兄弟)
るなん

アントアーヌAntoine Le Nain(1588ころ―1648)、ルイLouis Le Nain(1593ころ―1648)、マチューMathieu(1607―77) フランスの画家の三兄弟。フランス北東部のランで役人の息子として生まれ、3人とも1620年代末には、パリで活躍を始める。今日ではとりわけ農民を描いた風俗画で知られるが、ほとんどパリに住んでいたと考えられ、当時はむしろ宗教画、肖像画の画家として地位を築き、48年の王立アカデミー設立時には、3人ともその会員になっている。しかし、その直後の5月末にアントアーヌとルイは続いて世を去る。マチューはその後も活躍を続け、「国王の画家」「サン・ミッシェルの騎士」などの称号を得ている。

 ル・ナン兄弟の作品それぞれを3人のだれが描いたかについては、まだ不明な点が多い。『家族の肖像』(1647、ルーブル美術館)などの比較的小ぶりな作品群は、明るい色とゆったりした人物配置に特色があり、普通アントアーヌ作とされる。またもっとも有名な『農民の夕食』(1645~48ころ、ルーブル)など農民の生活題材とした作品群は、灰色茶色など抑制した色調、古典的な緊密な構成を特色とし、ルイ作と想定されている。オランダのカラバッジョ派に影響されたと思われるリアルな描写明暗コントラストを特色とする『喫煙室』(1643、ルーブル)などの作品群はマチューにあてられる。

[宮崎克己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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