レズビアン・ゲイ解放運動(読み)レズビアンゲイかいほううんどう

百科事典マイペディア の解説

レズビアン・ゲイ解放運動【レズビアンゲイかいほううんどう】

家父長制社会は異性愛強制によって維持される。たとえば社会が〈日本には同性愛者は存在しない〉と装うとき,あるいはメディアのなかで特殊な同性愛イメージを氾濫させるとき,現実の同性愛者は自分のセクシュアリティについて沈黙を強いられ,心理的・社会的・身体的な閉鎖空間(クロゼット)に閉じこめられがちである。レズビアンゲイ解放運動は,同性愛者が公的な空間において自分のセクシュアリティ(セックス)を明らかにすることでその存在を社会に知らしめ(カムアウト),日常的な他人とのコミュニケーションから法にいたるまでの,あらゆる場面の闘争に政治的に関わり,そこで自分なりの新しい生き方をつくっていく運動である。同性愛差別に対するそれまでの先駆的な努力と,1960年代の公民権運動ウーマン・リブなどを背景に,1969年のストーンウォール暴動をきっかけとして各国に波及した。その結果米国では1973年に同性愛が医学的に異常,倒錯とはみなされなくなり,サンフランシスコでは1977年ハーベイ・ミルクがゲイとしてはじめての行政執政官に選出された。またデンマークスウェーデンでは同性同士の結婚が認められるようになり,1996年には南アフリカ共和国憲法で性的指向による差別の禁止が世界で初めて明文化された。日本でも1970年代後半から様々な組織が誕生する。1991年には公共施設の使用問題をめぐり,レズビアン・ゲイ団体〈アカー・動くゲイとレズビアンの会〉が同性愛者の人権を求める訴訟を起こし,1994年からは毎年東京レズビアン・ゲイ・パレードが開催されるなど,独自のレズビアン・ゲイ解放運動が展開されている。ゲイ文学やレズビアン文学の抬頭も解放運動の一翼をになっている。
→関連項目ゲイレズビアン

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