ロシア連邦南西部に位置するロストフ州の州都で、ドン川下流北岸に面する港湾都市。人口101万7300(1999)。黒海とアゾフ海をトルコ海軍が支配していた1749年にロシアによって港が築かれ、61年には要塞(ようさい)が建設された。96年市制施行。のちに小麦などの輸出港、荷物積替え港として発達し、とくに帝政後期には西欧への小麦積替え港として繁栄した。工業では、トラクターやコンバインを製造する大企業「ロストフ農業機械」工場があるほか、工作機械部品、航空機、電気機器、電子機器、化学、軽工業(製靴など)、食品加工(缶詰、たばこ)、木材加工などがある。ロシア中央部と北カフカス地方を結ぶ陸上交通の結節点でもあり、鉄道、幹線道路、石油パイプラインが集中し、ボルガ・ドン運河を通じてモスクワやサンクト・ペテルブルグへも水路が開けている。国立大学ほか八つの高等教育・研究機関、4劇場、郷土博物館などが置かれている。
[渡辺一夫・上野俊彦]
ロシア連邦南西部の同名州の州都。略称はロストフであるが,モスクワ北東の同名の古都との混同を避けるため,正称を用いることが多い。人口105万8000(2002)。ドン川下流,アゾフ海から北東約50kmに位置する。1749年,河口がトルコの支配下にあったときに港として建設されたのが起源で,61年に要塞が築かれ,その周辺に発展した。輸送地として重要地点を占め,19世紀ロシアのカフカス地方植民化の進展とともに成長。同時にこの地域の革命運動の中心ともなり,1902年,著名なロストフ・ストライキを経験した。十月革命後の内戦期にはたびたびドイツ軍,白衛軍に占拠された。また,第2次世界大戦中にはドイツ軍に破壊された。ヨーロッパ・ロシア中央部とカフカス地方を結ぶ道路,鉄道,パイプラインが通り,さらにドネツ炭田と近接しているため工業が発達しており,金属加工,タバコのほか,特に農業機械製作ではロシア最大級の工場がある。内陸へのドン川経路は1952年完成のボルガ・ドン運河により改善されている。
執筆者:高田 和夫
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