日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ロバーツ(Richard Roberts)
ろばーつ
Richard Roberts
(1789―1864)
イギリスの発明家。自動ミュール紡績機の発明、工作機械の改良で知られる。ウェールズのモントゴメリーシャーに生まれる。採石工、鋳型工などを転々としたのち、1814年からロンドンの有名なモーズリーの機械工場の旋盤工となり、1816年に独立してマンチェスターに機械工場を設立。1817年に自家用の工作機械として平削り盤、主軸の多段変速機構(バックギヤ)を備えた旋盤を開発(いずれもロンドンの科学博物館に所蔵)。主として繊維機械を製造し、改良力織機(りきしょっき)(1822年特許)と自動ミュール紡績機(1825、1830年特許)は好評を博した。とくに後者は、複雑な手工業的熟練を要し、クロンプトンの発明以後、ミュールに加えられた多くの改良でも実現できなかった巻き取り工程の自動化に成功したもので、これ以後20世紀初頭までイギリス綿工業の主力機種の地位を確保した。
1854年ごろ事業の第一線から退いたが、その後もコンサルタント業を営み、機械、時計、船舶用機器などの分野で多くの発明を行い、取得した特許は28件に及ぶ。1861年にロンドンに移転したが、晩年は経済的に恵まれなかった。
[水野五郎]