改訂新版 世界大百科事典 「ワリー」の意味・わかりやすい解説
ワリー
Walī Muhammad
生没年:1667?-1707?
インドの詩人。ウルドゥー文学史初期の詩人として最も大きな評価を得ているが,その生涯と作品にいくつか不明な点がある。デカンのアウランガーバード出身とされている彼は,20歳のときにグジャラートのアフマダーバードに移住しスーフィーの修道場に入り,ダッキニー・ウルドゥー語の詩作も始めた。1700年にワリーはデリーにのぼったが,彼のデリー訪問はウルドゥー韻文文学の発達史上に最も重要なできごととなった。当時のデリーの詩人たちはもっぱらペルシア語で詩作していたが,ワリーは彼らにペルシア詩の要素を盛り込んだウルドゥー語の抒情詩を紹介して大きな衝撃を与えた。以後のデリー詩壇は徐々にウルドゥー詩が主流を占めるようになった。ワリーの抒情詩は恋人の美しさの賞賛が主題であり,全体にみなぎる活気と明るさ,平易な比喩や流麗な表現などを特徴としている。彼の詩は《クッリヤーテ・ワリーKulliyāt-e Walī》(1927)など数点の詩集に編纂されている。
執筆者:鈴木 斌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報