一国二制度(読み)イッコクニセイド(英語表記)one country, two systems

デジタル大辞泉 「一国二制度」の意味・読み・例文・類語

いっこく‐にせいど【一国二制度】

一国の中に、政治制度経済制度の根本的に異なる地域が複数ある状態。多く、社会主義国の中国において、1997年に英国より返還された香港などで資本主義や独自の政治制度が認められている状態をいう。1980年代には台湾との統一の方法として中国側から提案された。一国両制

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共同通信ニュース用語解説 「一国二制度」の解説

一国二制度

社会主義の中国に資本主義を併存させる制度。元々は台湾統一政策として構想された。1997年に英国から返還された香港、99年にポルトガルから返還されたマカオに適用され、中国の「特別行政区」となった。憲法に当たる「基本法」は返還後も資本主義を50年間維持し「高度の自治」を認めると規定言論集会信仰、職業選択の自由も約束。中央政府(中国)が外交、防衛を担い、政治改革など重要事案については中国の承認が必要と定めている。(共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一国二制度」の意味・わかりやすい解説

一国二制度
いっこくにせいど
one country, two systems

中国で採用されている統治方式。一つの国のなかに社会主義と資本主義の二つの制度が共存していることをさす。中国語では「一個国家、両種制度」といい、「一国両制」と略す。中国共産党の最高実力者であった鄧小平(とうしょうへい/トンシヤオピン)が、1970年代末に台湾問題を平和解決するために提案したものとされる。その後、全国人民代表大会常務委員会委員長であった葉剣英(ようけんえい/イエチエンイン)が1981年に発表した台湾問題に関する談話に、中国との平和統一に応じれば、中国は台湾の現状を尊重し、高度な自治権と軍隊の保有を容認し、経済社会制度を変えないことを保証する、という内容が盛り込まれた。1997年にはイギリスから返還された香港(ホンコン)で一国二制度が初めて導入され、返還後の50年間にわたり香港に外交と防衛を除く「高度な自治」など特別な地位が保証された。1999年にはポルトガルから返還されたマカオにも適用された。中国政府は2014年6月に「『一国二制度』の香港特別行政区における実践」と題する白書を発表し「一国二制度は香港の長期にわたる繁栄と安定に寄与した」などと評価したが、返還後、中国政府は香港の選挙や言論の自由に干渉し、制度が守られていないと主張する香港市民も多く、2013年以降、中国政府による香港の選挙制度への干渉に抗議する市民デモが頻発している。

[矢板明夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一国二制度」の意味・わかりやすい解説

一国二制度
いっこくにせいど

「一つの国,二つの制度」 (一個国家・両種制度) の略称。中国がホンコン,マカオの主権を回復し,台湾との統一を実現するために 1978年末に打出した統一方針。この方針によって,中華人民共和国を中央政府として,平和統一の前提下で大陸は社会主義制度,ホンコン,マカオおよび台湾は高度な自治権を有する特別行政区として資本主義制度を実行する。具体的には,特別行政区は現行の社会・経済制度,法律制度,生活方式および外国との経済文化関係を変えず,立法権,終審権,外事権,貨幣の発行権を有する。また台湾の場合,大陸に脅威を与えないかぎり独自の軍隊をもつことができる。 84年 12月 19日,中国は 97年のホンコン中国返還問題に関する共同声明を発表し,1990年に採択されたホンコン基本法で 97年以後のホンコン基本制度を定め,ホンコンに関する「一国二制度」を具体化し,97年7月1日の返還に伴って適用した。また,1987年4月 13日,中国とポルトガルはマカオの中国返還問題に関する共同声明を発表。 99年 12月 20日の返還に伴って同じく「一国二制度」を適用した。台湾との統一工作も進められている。一国二制度の方針が打出された背景として,「改革・開放」方針のもとで,中国はイデオロギー重視から脱却し,現実の利益を重視する内政外交に転換することがあげられる。

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世界大百科事典(旧版)内の一国二制度の言及

【鄧小平】より

…軍事を除いて公式には党・国家の最高の地位には就かず,89年に中央軍事委員会主席も辞任して一切の公職から離れたが,中国のキングメーカー,国策決定者として絶大な影響力を行使した。台湾の統一を射程に入れて〈一国二制度〉を提唱し,香港の中国復帰にそれを適用した。そこから〈中国の総設計師〉の称を得,死後は中共15回大会でその理論が党の指導思想として規約に明記された。…

※「一国二制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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