三竦(読み)さんすくみ

精選版 日本国語大辞典 「三竦」の意味・読み・例文・類語

さん‐すくみ【三竦】

〘名〙 (「関尹子三極」の「螂蛆食蛇、蛇食蛙、蛙食螂蛆、互相食也」による語) ヘビナメクジを、ナメクジはカエルを、カエルはヘビを恐れるということ。転じて、三者が互いに牽制(けんせい)しあって、身動きできない状態をいう。
※俳諧・瀬とり舟(1704)「妻に逢夜若衆忍で蛙蝸蛇(サンスクミ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三竦」の意味・わかりやすい解説

三竦
さんすくみ

中国周代の道学者関尹子(かんいんし)の著書とされる『関尹子』「三極」のなかに記されるたとえ。ヘビ(蛇)はナメクジ(蛞蝓)を恐れ、ナメクジはカエル(蛙)を恐れ、カエルはヘビを恐れるとする故事から、転じて、三者互いに牽制(けんせい)し合って、身動きのできない状態をいう。「みつどもえ」(三つ巴)ともいう。この三竦を用いたものに、2人相対座して行う遊戯、拳(けん)がある。親指をカエルに、人差指をヘビに、小指をナメクジに見立てて行う虫拳、また、キツネ(狐)は鉄砲に負け、鉄砲は庄屋(しょうや)に負け、庄屋はキツネに負けるとする藤八拳(とうはちけん)(狐拳(きつねけん))、そして現在も遊ばれるじゃんけんの石、はさみ、紙もこの三竦を原形とする。江戸時代の合巻(ごうかん)とよばれる挿絵小説『児雷也豪傑譚(じらいやごうけつものがたり)』(初編1839。美図垣笑顔(みずがきえがお)ら作)は、このヘビ、カエル、ナメクジの三竦を趣向にとった作として有名である。

[棚橋正博]

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